社会新報

【主張】原水禁世界大会~核抑止論を許さず核なき世界を

(社会新報7月19日号3面)

 

 原水爆禁止世界大会が7月30日の福島大会、8月4日から6日の広島大会、同7日から9日の長崎大会と開かれる。コロナ禍で規模を縮小したり、開催形式を工夫して開かれてきたが、今年はコロナ禍以前の大会規模を目指すことにしている。

 被爆者の平均年齢は85・01歳(2023年3月末現在)に達し、被爆者から直接、被爆の実相を聞くことができる時間もいよいよ限られてきた。

 今年の大会は世界的な核抑止論のかつてない高まりや岸田政権による原発政策の大転換という極めて深刻な情勢のもとで開かれることになった。

 5月に広島で開かれたG7サミットで発表された「広島ビジョン」では、「核軍縮」をうたう一方で「抑止力強化」を掲げるという、相反するメッセージが発信された。すでに1年半が経過したウクライナ戦争ではロシアが核兵器使用をほのめかし、ウクライナを支援する米国が殺傷能力の高いクラスター爆弾の供与を決めるなど、状況はより深刻化している。

 こうした動向は被爆地の行政にも色濃く反映されている。広島市教育委員会が平和教育プログラムで使う『ヒロシマ平和ノート』から漫画「はだしのゲン」を削除したこともその一例だ。国の政策におもねり、ものが言えなくなっている現状の反映だ。

 また通常国会では、原発の再稼働や60年超の運転を可能にする「GX脱炭素電源法」の成立が強行された。さらに政府と東電は福島第1原発の汚染水の海洋放出を行なおうとしている。安全性の面からも大きな疑念がある上に、「関係者の理解なしには、いかなる処分も行なわない」という福島県漁連との約束をほごにするものだ。1500人いた福島の漁民は、3・11以後500人減り、今回、海洋放出が強行されれば、さらに減るだろうといわれる。

 日本被団協(日本原水爆被害者団体協議会)は6月に政党と懇談会を開いた。その席上、「わずかな年金や手当で暮らす高齢の被爆者から『あの時に死んでいれば、こんな苦痛はなかった』という声まで聞く。安心して介護が受けられるようにしてほしい」といった相談があったという報告もなされた。

 漁民から生活を奪い、被爆者に「あの時に死んでいれば」と言わせる日本の社会、政治を変えねばならない。原水禁大会で学習、交流を深め、運動を前進させたい。