社会新報

反貧困・いのちとくらしを守る~支援現場から院内で報告と政策提言

反貧困ネットワーク事務局長の瀬戸大作さん(10月20日)

 

(社会新報11月2日号1面)

 

 「反貧困ネットワーク」と「いのちとくらしを守るなんでも電話相談会」は10月20日、衆院第一議員会館で集会を開き、支援現場からの報告と提言を行なった。各省庁の担当者らを集会に呼び、対応を求めた。

 「所持金が100円しかなく、私たちの事務局に来る交通費すらない。そうしたSOSが相次いでいる。だから、こちらが駆けつけて支援を行なっています」。そう語るのは、反貧困ネットワーク事務局長の瀬戸大作さんだ。

行政の安全網が欠如

 「2020年4月から『緊急ささえあい基金』をはじめ、現段階で1億7000万円のカンパが集まり、延べ3400人に、9000万円以上を給付している」という。生活に困窮している難民・移民の人々への支援や、居場所を失った人々へのシェルター事業、ワーカーズコープとの共催での就労支援事業など、多岐にわたる活動をしているが、「これが民間のやることだろうか」と瀬戸さんは行政のセーフティーネットの無さに憤る。「小泉・竹中構造改革から20年、私たちのところに相談にきた人たちは、一度も正規の仕事につけなかったり、つけてもブラック労働で追い込まれた。中には、人を殺して死刑になりたいという人までいた」と、人々を絶望に追いやっている政治の責任の重さを強調した。
 同ネットの外国人支援担当の原文次郎さんは、難民その他の在留資格を得られていない外国人の人々の窮状は「就労もできず、国民健康保険に入れず、生活保護等の社会保障を受けられない」「自助、共助が難しく、公助がない」という制度の問題であることを指摘。この1年で、「300人に対し、緊急の駆けつけ支援などで500万円を給付、延べ40人超に家賃支援として300万円を行なった」と報告した。当事者主体のイベントも企画し、11月23日には埼玉県川口市の川口西公園で難民・移民フェスを行なうという。

女性の貧困化が加速

 コロナ禍の始まりから現在まで2ヵ月ごとに電話相談会を行なってきた「いのちとくらしを守る なんでも電話相談会」の猪股正弁護士は、「寄せられた相談は1万3950件。無職の人から相談が多く、直近で55%の人が仕事がない。45%の人が所持金1万円以下」と報告した。
 また、「50代の夫婦は夫がコロナで退職。妻も後遺症が残り、貯金が底をついたので生活保護の相談をしたが、住宅ローンがあるから無理と言われた」などの事例を列挙。「その場しのぎの支援策ではなく、社会保障制度の抜本的な改革が必要だ」と訴えた。
 作家で反貧困ネットワーク世話人の雨宮処凛さんは、「貧困の現場に16年関わってきたが、失業のみの理由でホームレスになった女性には、コロナ以前には会ったことがない。ところがコロナで派遣が切られて、あっと言う間にホームレス化する状況になっている」と、女性の貧困の悪化を強調。「パートの仕事を減らされた上、失業した夫からDVを受け、子どもや親の世話もあると、問題が複合的だ」として、「給付は世帯単位ではなく個人単位に」などの提言を行なった。

社民党は家賃補助を提案

 集会には国会議員も大勢参加し、社民党の福島みずほ党首も発言。福島党首は、貧困対策で、とりわけ重要なものとして「全国一律最低賃金1500円を目指すこと」を挙げ、また「『住まいは権利である』として「恒久的な家賃補助を提案している」と、党の政策を説明した。
 集会の第2部では、主催者側が政策提言し、会場に招いた各省庁の担当者とやり取りした。提言は多岐にわたり、瀬戸さんらは、「特例貸付の利用者に対し、来年1月以降始まる償還の免除・猶予などを行なうことや、最低生活費を下回る世帯に資産調査なしで生活扶助費相当額を給付する制度の新設、相対的貧困層が利用できる支援制度を行政の窓口でもっと説明することが必要だ」などと訴えた。
 反貧困ネットワーク理事長の宇都宮健児さんは、「役人に働きかけると同時に、これまでの政治を変える大きな運動が必要だ」と述べて集会を締めくくった。

 

メモ【反貧困ネットワーク】2007年に結成、「年越し派遣村」などの支援活動を行なってきた。2021年4月に一般社団法人化し、取り組みを強化。立憲野党とも連携し、今年2月には、瀬戸大作事務局長が衆院予算委で意見陳述した。「いのちとくらしを守る なんでも電話相談会」は全国の弁護士、司法書士、社会福祉士などが連携し、2ヵ月間隔で無料の電話相談を行なっている。相談会の日程や過去の内容などは、「生活保護問題対策全国会議」のウェブサイトで確認できる。