社会新報

【主張】旧優生保護法問題~いのちを分けない社会をつくろう

(社会新報11月9日号)

 

 「いのちを分けない社会をつくろう」「優生保護法解決しよう」。気温の急激な冷え込みに襲われた10月25日、国会へと続く沿道にこのコールが響いた。旧優生保護法による強制不妊手術の被害者やその家族、支援者らが全国から日比谷野音に集まり、「優生保護法問題の全面解決をめざす10・25全国集会」が行なわれ、約1300人が参加した。
 旧優生保護法は1948年~96年の48年間にわたりこの国に存在した。「優生上の見地から不良な子孫の出生を防止する」ことを目的として、本人の同意がなくとも、都道府県の審査会に申請し認められれば、障害者に対して強制不妊手術が行なえるというもの。
 同意なく強制不妊手術をされた被害者は、判明しているだけでも約1万6500人。何も知らされず未成年のうちに手術を受けさせられた人や、同法の対象外でありながら、障がい者への差別の根深さから不本意に手術に追い込まれた人もおり、正確な被害実態は把握できていない。19年4月、「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律」が成立し、強制不妊手術の被害者約2万5000人に対し、一律320万円が補償されることになったが、申請件数はまだまだ少ない。現在、全国で31人が国に対して損害賠償を求める裁判を起しているが、このうち5人が亡くなっている。原告らの年齢を考えると、国による早急な解決が求められる。
 集会参加者らは国に対し大きく4つの要求を掲げた。①国の責任を認め、被害者すべてに謝罪と補償、人権と尊厳の回復を行なうこと②優生保護法の被害実態の調査・検証・再発防止の確立③22年2月大阪高裁、3月東京高裁の判決(いずれも原告勝訴)に対する上告を直ちに取り下げ、全ての裁判で原告の訴えを認め、裁判の終結させること④差別のない、いのちを分けない社会をつくる施策を検討するため、被害者、障がい当事者、関係団体・弁護団等との継続的な協議の場を設定  。衆参議員面会所前では、野党国会議員らが原告から直接請願を受けた。早期解決へのバトンは国会に託されている。
 法改正後もなお政治が強化した優生思想は今もあらゆるところで顔を覗かせる。相模原障がい者殺傷事件がまさにそれだ。優生思想から脱却するためには、国による過ちを認めて謝罪し、真に向き合うことからしか始まらない。