(社会新報2月15日号1面より)
社民党の福島みずほ党首は1月31日、富山市の北陸電力本店を訪れ、能登半島地震を受けて非常用電源が停止するなどの事態となった志賀原子力発電所(石川県志賀町)の視察を受け入れるよう要望した。
福島党首は冒頭、能登半島地震で被害にあった方々にお見舞いを申し上げた上で、志賀町では震度7を記録し、原発敷地内の土壌の陥落や施設の損壊などが懸念されることを指摘した。
北陸電力のこれまでの発表では、外部電源の3系統中2つの経路上にある変圧器が故障し、油漏れが2万リットルあったこと、使用済み燃料貯蔵プール水が床面に約95リットル~326リットル飛散したことが明らかになっている。福島党首は、「重大事故にもかかわらず北陸電力は外部への放射能の影響はないと言い切っており、社民党は疑念を抱かざるを得ない」と述べた。
また、再稼働には実効性ある避難計画の策定が必要だが、「今回の被災状況から見て実効性ある避難計画の策定は不可能であることが誰の目にも明らかになった。再稼働は許されるものではない」として、廃炉に向けた手続きを取るよう強く要請した。
これに対して北陸電力エネルギー広報チームの在原真慈課長は「地震の余震が続く中、安全性を考慮し、いつ視察ができるのか分からないが、できるだけ早期に対応したい」と答えた。
福島党首はさらに、「新潟県中越沖地震の際には翌日、東電柏崎刈羽原発に視察に入った。県民も原発事故の不安を抱えている。なぜ北陸電力だけは受け入れないのか。『安全』というのなら、直ちに視察を受け入れてほしい」と要請した。
地割れ、断水など深刻
申し入れには服部良一全国連合幹事長、党石川県連の盛本芳久代表、党富山県連の島村進代表ら関係者が同席した。
その後、視察団一行は富山県氷見市を車中から視察し、午後には石川県の七尾市、羽咋市、内灘町の被害状況を視察した。
被災者からは、「七尾では屋根の修理など300件の順番待ちだ。高齢化・人手不足であらゆる建築職人も減っている」「内灘町の3地区では多くの家が倒壊寸前。液状化で集団移転も検討が必要だ。外見は大丈夫でも家の中はメチャクチャだ」「震災から1ヵ月経っても、まだ上下水道が使えない」などの切実な訴えがあった。
予算の確保が不十分
視察を終えた福島党首は記者会見で「震源地から離れた地域でも被害状況は予想より深刻だった。国として予備費で支援するだけでなく、補正予算として要求したい。被災者の将来の不安など県と連携して、国策として取り組むよう国会で訴えていく」と決意を語った。
党石川県連の盛本代表は「若い人も石川県にずいぶん移住している。若い人や被災者が希望の持てる街づくりを。軍拡や大阪万博よりも、被災者支援に予算を回してほしい」を訴えた。
2月5日に北陸電力から福島党首に対して要請事項に関する回答があった。情報発信の遅れや不正確さについて「初動対応するための要員は確保している」、原子力防災は成り立つのか、実効性ある避難計画の策定は無理ではとの指摘について「緊急時対応について不断の改善、充実に取り組み、事業者としての必要な協力はする」などと、自らの危機管理体制の不十分さを反省すらしない回答であった。