
会見する(左から)中井弁護士、大椿副党首、神原弁護士。 (6月27日、霞が関の司法記者クラブ)
副党首の大椿ゆうこ参院議員が、自身に対してX(旧Twitter)上で「おまえの永住許可を取り消したいわ 反日クソクズ在日が!」などの投稿を行なった元大王製紙会長の井川意高氏を訴えた裁判の判決が6月27日、東京地方裁判所であり、原告・大椿議員の社会的評価を低下させたとして、名誉毀損(きそん)・名誉感情侵害を認め、被告・井川氏に55万円の支払いと投稿の削除を命じた。
判決後、大椿議員は代理人の神原元・中井雅人両弁護士と共に司法記者クラブで記者会見を行なった。東京地裁は、井川氏の投稿が、原告が日本の害となる政治的信条を抱いていて、そのような者が日本で国会議員をしていることがふさわしくないと指摘しており、一方で、原告を外国人または民族的マイノリティとみなした上で、不当な差別的言動を行なうことが人格的利益を侵害する「みなし差別」だとする主張については、「名誉権や名誉感情とは別に侵害される人格権の内実は必ずしも判然としない」と採用しなかった。
大椿議員は会見で、提訴に至った理由について、「法律に違反した外国人の永住許可取り消しを可能とする入管法改悪案が審議されていたことが井川氏のような発言を生み出した。政治の責任を感じた」と述べた。その上で、判決が差別について切り込めていないことは問題だとし、また土井たか子氏を「半島出身者」と記述した月刊誌『WiLL』については200万円の支払いが命じられたことから、裁判所がネット上の差別発言の拡散力の大きさを十分に考慮しきれていないと指摘した。井川氏のフォロワーは、提訴時点で18万6000、現在は44万を超えており、『WiLL』のような雑誌より発信力が大きいともいえる。
また、大椿議員は今国会において、政治家が本来政治が受け止めるべき人々の不満のスケープゴートとして外国人を標的にする例が目立ったと指摘し、「差別をしたとの自覚がない政治家もいることから、何が差別かを明確にするために包括的差別禁止法の制定が必要だ」と指摘した。