台湾有事を回避せよ! ~新外交イニシアティブの猿田代表が講演~
(社会新報2月1日号2面より)
外交問題で政策提言を続けるシンクタンク「新外交イニシアティブ」(ND)の猿田佐世代表が1月19日、衆院第二議員会館で「戦争は回避しなければならない」と題して講演し、約200人が参加した。立憲フォーラムと戦争をさせない1000人委員会が共催。
猿田代表は、「台湾有事」に関して、「日本の安全保障政策の絶対的な命題は、『台湾有事を回避せよ』という一言に尽きる」と強調した。そして「日本1国では中国とも北朝鮮とも戦争になる理由も可能性もない。日本が戦争に巻き込まれるとすれば、台湾の独立をめぐる台湾有事に、日本が米国の作戦の一部を担うからだ」と述べた。
外交力で自制を促す
さらに「日本が台湾有事に巻き込まれることさえ避けられれば、日本の民間人が戦争に巻き込まれる可能性も命を落とす可能性もない」と語った。
その上で猿田さんは、台湾有事の回避のためには、平和外交を駆使して、「軍拡を続ける中国に対しては台湾独立を支持しないと伝えて、自制を求める必要がある。同時に、米国に対しては挑発をやめるよう求めねばならない」と訴えた。
昨年12月に閣議決定された安保3文書改定では、日本の敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有や2023年度から5年間で防衛費を43兆円とし、現行計画の1・5倍以上とすること、さらに27年度には対GDP(国内総生産)比2%へ倍増することが決定された。このことについて猿田さんは「米政府は日本の防衛予算の倍増に関し、強く歓迎した。それは当然だ。米国家安全保障戦略(昨年10月発表)では『統合抑止』、すなわち、同盟国にも軍事力の強化を促し、米国の抑止に組み込む政策を打ち出した。同盟国の力を借りなければ中国に覇権国の地位を奪われかねない米国の要望に対し、日本が応えたからだ」と指摘した。
「安心供与」が不可欠
猿田さんは、「安保政策の最大の目的は、戦禍から国民を守ることだ」と強調した。「軍拡競争でこちらが増やせば向こうも増やすという安全保障のジレンマに陥り、地域がさらに不安定化するだろう」と述べ、抑止論に拘泥する発想からの転換を訴えた。
その上で、「戦争を防ぐためには、相手が『戦争してでも守るべき利益』を脅かさないことによって戦争の動機をなくす『安心供与』が不可欠だ。そのための外交が欠かせない」と強調した。
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