(社会新報2022年6月1日号3面【主張】より)
戦争準備の足音が次第に大きくなってきている。
5月23日、日本を訪問したバイデン米大統領と岸田首相との首脳会談が開かれた。会談後の共同記者会見でバイデン米大統領は、中国が台湾に侵攻した際には米軍が軍事的に支援することを明言した。これまで維持してきた、有事の際の対応を明確にしない「あいまい戦略」から転換した。
岸田首相は、「日本の防衛力を抜本的に強化し、その裏付けとなる防衛費の相当な増額を確保する決意」を表明した。自民党は、防衛費を5年以内にGDP(国内総生産)比2%水準(10兆円強)にすると政策に掲げているが、それを裏付ける発言である。また、「ミサイルの脅威に対抗する能力を含め、国家の防衛に必要なあらゆる選択を検討する決意」であることも示した。敵基地攻撃能力の保有を示唆した発言だ。国際紛争を解決する手段として、戦争と武力による威嚇または武力の行使を永久に放棄するとうたう憲法を持つ国の首相が、自ら好戦的な姿勢を隠そうとしなくなった。
これを受け社民党は、5月24日に幹事長談話を発表した。岸田首相に期待される、在日米軍からのコロナ感染拡大の背景にある日米地位協定の改定の提起などは全くなく、ロシアのウクライナ侵攻や中国の動きに対する懸念から「力対力」の対決姿勢ばかり先行させている状況に疑問を呈した。また、福島みずほ党首は5月25日の記者会見で、「岸田首相は米大統領に対して防衛予算の大幅増額と敵基地攻撃能力保有の検討を語ったが、国民と国会に十分な説明もないままに、なぜ他国の大統領に表明したのか。どこの国の首相なのか」と批判し、米中が軍事衝突することになれば、集団的自衛権行使という形で日本が巻き込まれることになると指摘した。そして、「戦争を回避するために外交的な努力をすべき。社民党は戦争を止めるために全力を尽くす」と強調した。
街頭に立つと、「社民党は、憲法9条を守るというが、9条でこの国を守れるのか。攻められてきたらどうやって守るのか」と尋ねられることが多くなった。しかし、戦争準備こそが、この国に戦争をもたらす。武力に対して武力で対抗し続ければ、行き着く先は核兵器の使用でしかない。
戦争の時、攻撃の対象になる原発を54基も抱え、食料自給率が40%以下のこの国で、戦争を回避するためには、やはり対話による外交しか選択肢はない。
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