社会新報

9月1日追悼式典-関東大震災朝鮮人犠牲者を歴史から葬るな-

(社会新報2021年9月15日号3面より)

 

9月1日午前11時から、「関東大震災98周年 朝鮮人犠牲者追悼式典」が東京・墨田区の都立横網町公園で行なわれた。主催は、日朝協会東京都連合会などで構成する実行委員会。

昨年に引き続き、今年も一般参加は認めず、インターネットで生中継された。

1923年のこの日、関東大震災が発生し、多くの朝鮮人が虐殺された。

歴史を否定する愚行

同式典は、74年から毎年、公園内の朝鮮人犠牲者追悼碑前で行なわれている。

歴代の東京都知事は、式典に追悼文を送ってきた。だが、現在の小池百合子知事は、就任翌年の2017年から送付を見送っている。今年も実行委は送付を要請したが、実現していない。同じ公園内の慰霊堂で行なわれる大法要で「犠牲者すべてに哀悼の意を表している」からだという。

小池知事はこれまで、関東大震災時の朝鮮人虐殺について「さまざまな見方がある」「歴史家がひも解くもの」など、歴史の事実から目を背ける発言をしてきた。

式典で、日朝協会東京都連合会会長の宮川泰彦実行委員長は、次のように語った。

「なぜ毎年、追悼式典を行なうのか。同じ過ち、類似の過ちを、絶対に犯してはならないからだ。98年前のあの悲惨な歴史事実を忘れないこと、世代を超えて継承していくことこそ、私たちの責務ではないか」

朝鮮総聯東京都本部の梁春植(リャン・チュンシク)副委員長は、小池知事を次のように批判した。

「震災という自然災害で亡くなった犠牲者と、虐殺された被害者とでは、根本的に犠牲の性質が異なる。知事は両者をひとくくりにすることで、民族差別を背景にした虐殺事件から目をそらし、否定しているように感じる」

官民とも朝鮮人虐殺

関東大震災時に朝鮮人などが数多く虐殺された事実は、各種史料や歴史研究により、かなり明らかにされている。

大震災が発生した9月1日の夕方には「朝鮮人が殺人を犯している」「放火している」「井戸に毒を投げ入れた」などの流言が出始め、警察官などもそれを各所でふれ回った。3日には、内務省警保局長名の〈朝鮮人は各地に放火し…〉などの通牒が、全国の地方長官に打電された。

実際は暴動など起きていないにもかかわらず、流言が新たな流言を生み出した。デマ情報をもとに、新聞は「朝鮮人暴動」に関する記事を相次いで報じた。

その結果、憎悪はかき立てられ、東京を中心とする関東地方などで、自警団だけでなく、警察や軍隊も朝鮮人虐殺をくり広げた。犠牲者の中には、社会主義者や無政府主義者、また中国人も、少なからずいた。ただし、警察側が多くの遺体を隠したこともあり、正確な犠牲者数は分からない。

だが、内閣府中央防災会議の調査報告書(08年)は、朝鮮人などへの虐殺の事実を認め、「震災による死者数の1~数パーセント」と推計。震災全体の犠牲者数は約10万5000人とされるので、「1000人から数千人」ということだ。

排外主義団体も集会

同日の正午前から、公園内の別の慰霊碑前で、排外主義団体「日本女性の会 そよ風」も集会を開いた。同会は、朝鮮人虐殺の事実を否定またはわい小化するが、根拠は非合理的だ。

2年前の同集会でなされた発言に対し、東京都は人権尊重条例を適用し、「不当な差別的言動(ヘイトスピーチ)」と認定した。

見たくない歴史と真摯(しんし)に向き合う勇気が、いま必要とされている。

 

↑式典実行委員長の宮川泰彦さんは熱く語った(9月1日、都立横網町公園)。

 

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