社会新報

能登震災で日本記者クラブが連続会見を企画~七尾市長が断水被害を報告~震災時のデマ拡散に対策を

廣井悠・東京大学先端科学技術研究センター教授

茶谷義隆・七尾市長

木村玲欧・兵庫県立大学教授。

 

(社会新報2月8日号1面より)

 

 能登半島地震に関連して、日本記者クラブが1月18日と19日に連続で3つの会見を企画した。専門家や七尾市の茶谷義隆市長や専門家が、現地の断水状況やネット上などで広がったデマなどについて語った。

断水で消火できず

 能登半島地震では、多数の火災が発生。中でも、石川県輪島市の中心部の朝市通り周辺で出火した火災は被害が大きかった。廣井悠・東京大学先端科学技術研究センター教授は18日の会見で、現地調査や報道の分析から地震火災を考察した。廣井教授は朝市通りの火災について、「309棟が延焼した」「焼失面積は4万2652平方㍍」と推定。被害が大きかった要因として考えられるのは、木造密集市街地であったことの他、住民へのヒアリングから、「地震による断水で消火栓が使えなかった」「道路被害のポンプ車の到着が遅れた」「一部の防火水槽が倒れた電柱で道がふさがれていたため使えなかった」「地震の影響か、川の水の水量が半分くらいしかなく、使うことが困難であった」などの状況が「消火活動に影響を及ぼしたことが推測される」と述べた。
 さらに今後のより詳細な調査が必要としながらも、廣井教授は「津波の影響で、初期消火や延焼防止活動ができなかった可能性もある」とも指摘。大津波警報が発令され、消防団員も避難することを余儀なくされたとも報道されていることに触れ、「海沿いの人口密集地など輪島市と同じような場所で、どのような災害対策をすればよいかは地域特性も考慮してあらためて検討する必要がある」と語った。他方、廣井教授は「冷静な分析や対応が重要」と強調。生活や観光の場として地域のあり方と安全性の両立を説いた。

断水が生活を直撃

 19日には、石川県七尾市の茶谷義隆市長が現地からオンラインで会見。
 茶谷市長は、罹災証明書の届け出状況から、七尾市の世帯数およそ2万2000戸のうち「7千数百戸が被害にあった」と推察。目下の深刻な問題としては断水を挙げた。「七尾市には加賀方面から県の送水管で水が送られてくる。そこがだいたい7割ぐらいを占めているが、漏水があって、なかなか(送水管が)つながらない」「約2万2000戸のうち、断水していないのは約4000戸。トイレが流せない、お風呂に入れない、洗濯ができないなど、生活に支障が出ている」と語った。
 道路が地震で破壊されたことから、石川県は当初、ボランティアの受け入れを制限していたが、一方で人手不足も深刻化。
 茶谷市長は「倒壊した建物の片付け、撤去であったり、避難所でも人員が足りなくて疲弊している職員もいる。そうしたニーズを捉えながら(ボランティアの)募集をしていきたい」と語った。

デマが差別を助長

 同じく19日、木村玲欧・兵庫県立大学教授も日本記者クラブで会見を行ない、「災害対応・支援活動を邪魔し遅らせる」「被災地を混乱させる」として、デマ・偽情報の有害さを語った。
 木村教授はデマの具体例として「X(旧ツイッター)に、息子が挟まって動けないと身に覚えのない投稿をされ、しかも住所をさらされたという石川県の40代の女性がいる」と紹介。「そもそも息子はいなかったが、知人からは安否を気遣う連絡があり、警察からも問い合わせが来た」。
 木村教授はデマが差別を助長することも指摘。「『能登半島に外国系の盗賊団が集結』として特定の国名や被災地の具体的な地域名を示したデマが流された」として、差別をあおるデマが今回の地震においても拡散されたことを憂慮した。
 木村教授は、デマを拡めないため、「裏取りのできない情報は拡散しない姿勢が大切」と説き、「メディアやファクトチェック団体、プラットフォーム事業者、行政機関等が連携し、速やかにデマを検証し打ち消すような一元的な体制が求められている」と話した。