社会新報

全国で女性の政治参画を~岸本杉並区長がジェンダー平等推進を訴え

日本記者クラブで会見する岸本区長(10月18日)。

 

(社会新報11月2日号3面より)

 

 東京・杉並区の岸本聡子区長が10月18日、日本記者クラブで会見を行ない、杉並区政の進展や、地方と国政で女性議員が増えることの意義や課題などについて語った。
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 地元の市民活動が応援する中、杉並区初の女性トップとなった岸本区長にはメディア関係者の関心も高い。日本記者クラブ側の求めに応じて行なわれた岸本区長の会見には、NHKや朝日新聞、毎日新聞など、報道各社の記者たちが集まった。
 今春の統一自治体選で杉並区議会に占める女性議員が半数となったことについて、岸本区長は、「議会の景色が変わった」と述べ、「ジェンダー平等や女性の貧困、気候危機、子どもや高齢者のサードプレイス(自宅や学校、職場以外の居場所)、防災における女性のリーダーシップといった議論が議会の中で大きくなったと思う」として、女性議員の増加が区議会にさまざまな面で良い影響を与えていると評価した。
 さらに、「エンパワメントの連鎖をと私は言っているが、選挙とその後の活動を通じて、勇気をもって現在の、未来の女性たちにも伝えていきたいと思っている。全国には1700以上の自治体があるが、これは日本全国に張り巡らされた大きなネットワーク。杉並区のチャレンジを全国に波及していかなくてはと考えながら仕事をしている」と、意気込みを語った。

パートナー制度導入

 岸本区長は「現代の複雑な社会に対応し、生活者の感覚をきちんと反映させていくためにも、いろいろな立場の人々が意思決定の場に参画すること。多様性というのは力であると強く信じている」と述べ、2023年4月24日から杉並区パートナーシップ制度を導入し、性的マイノリティのカップル17組がすでに登録していると報告した。パートナーシップ制度とは、「結婚に相当する関係」として、家族と同じようなサービス等が受けられるもので、同性婚が認められていない日本で性的マイノリティのカップルが受ける不利益を軽減する制度だ。
 また岸本区長は、「自治体の政策は、市民が意見表明したり、ディスカッションしたりする場があることが非常に重要だ」として、「杉並区では参加型予算を試験的に進めている」と説明。具体例として、森林環境譲与税による自治体への「森林の整備の促進に関する施策」での予算の使い方について、「日本の森林を守ることで何ができるかについての提案を区民から募り、57件の提案が集まった。それを区で内容を調整し、10個にまとめた。10月1日からオンラインと郵便でこれに投票できるようにして、予算の使い方を決める」との取り組みを紹介した。

化石燃料使わぬ社会

 温暖化対策についても、「杉並区はゼロカーボンシティの目標を掲げているが、気候危機が突きつけている人類への課題というのは非常に大きなもの。経済政策や都市インフラを根源的に変え、化石燃料を使わない社会にしていくことを実現するためにも、区民と一緒に議論していきたい」と語った。

給食の無償化を実現

 区長選の公約であった区の給食費無償化については、「先日の第3回区議会定例会で補正予算として可決された」と報告。「杉並区内の2万9500人の子どもたちに対して、給食費の無償化をこの10月から行なうことができたことは本当にうれしい」「給食費無償化は、私はかねてから国の役目だと思っているが、それを待つのではなく、自治体ができることで一歩を踏み出す意味は非常に大きい」と述べた。
 岸本区長は、区長選で掲げた大きな政策の一つとして「公共の再生」に触れ、「自治体の職員や施設はコストではなく財産」と強調。「図書館やスポーツ施設、区民集会施設の多くが指定管理者制度を使っているが、その検証を行なった」と述べ、「住民が運営に携わっていくというパートナーズ制度を議会で提案した」と報告した。その上で、昨今、官製ワーキングプアが問題とされ、非正規雇用を女性が担っている現実の中で、「労働環境の待遇をきちんと区が見ていくということは大切なこと」と述べた。