「国葬」は法的にも政治的にも 無理がある~「国葬反対大集会」で小林節さんが講演で鋭く指摘
(社会新報10月5日号より)
安倍晋三元首相の国葬に反対する「国葬反対大集会」(主催・安倍元首相の国葬を許さない会。藤田高景代表)が9月26日に行なわれ、約300人が参加した。会場となった衆院第一議員会館の大会議場は平日の昼間の開催にもかかわらず超満員。関心の高さをうかがわせた。
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集会では、憲法学者の小林節・慶應義塾大学名誉教授が特別講演を行なった。小林さんは「今回の『国葬』には、法的にも政治的にも無理がある」と批判。「法的とは法的根拠があるか、政治的とは安倍元首相が国葬に値するとの国民的合意があるかということ」と定義した上で、岸田政権の無理筋を批判。「岸田首相らは『国葬は内閣府設置法に基づく国の儀式』と主張するが、内閣設置法4条3項33は手続き法にすぎず、国葬の根拠となる法律ではない」「国葬の根拠になる国葬法は戦後に廃止され、現在は存在しない」と切って捨てた。また、「根拠となる法律がない」との追及に対し、岸田首相が「内閣には裁量権がある」と強弁していることについて、小林さんは「内閣が持っている裁量というのは、明らかに国会で決められた範囲内でのこと。つまり、法律の根拠のない裁量などあり得ない」と反論。岸田政権が三権分立の原則を踏みにじっていることを指摘。「内閣の裁量で何でも決めてよいのなら、国会ではなく、内閣が国の最高意思決定機関となってしまい、憲法に抵触する。おかしいことだ」と憤った。また、小林さんは「法的根拠のない『国葬』をやろうとすることは『法の支配』に反する、分かりやすく言えば、憲法の支配に反することだ」「法も道徳も無視して、やりたい放題にやるというのが安倍政治で、その方法で安倍元首相の国葬を行なったのが岸田首相だ」と、岸田政権が、安倍政権の悪しき政治手法を受け継いでいると指摘。「安倍政権以前は、自民党の政治家たちも、『それは憲法上できません』と言われると、『そうか、残念』と引き下がった。ところが安倍政権は憲法の解釈を変えてやろうとする。だが、それは違憲行為。憲法に縛られる人々が憲法の意味を変えることは一番いけないこと」と批判した。
小林さんは「主権者である国民の代表である国会を無視して、『国葬』を国民に押しつけるなど迷惑そのもの。だから怒っている」と述べ、「『国葬』で私たちの怒りに火がついたことは良かった。今日を、安倍政治を倒して自公政権を終わらせるスタートの日にしたらいい」と投げかけると会場から大きな拍手が送られた。
集会では著名人や有識者も次々に発言。ジャーナリストの鳥越俊太郎さんは、安倍政権が集団的自衛権の行使を容認する安保法制を閣議決定したことを振り返り、「安倍元首相は最も日本を戦争に近づけた男」「そんな人の国葬は絶対に認めることができない」と気炎を上げた。
京都大学教授の高山加奈子さんはオンラインで参加。高山さんを含むドイツ研究者らが「在日ドイツ大使に手紙を送り、旧統一教会と安倍元首相や自民党との関係や、『国葬』に法的根拠がないことを伝えた」と報告。
立憲野党からも各党の国会議員が発言。社民党からは新垣邦男副党首(衆院議員)がマイクを握った。沖縄選出の新垣議員は、「沖縄県民にとっては辺野古新基地建設も『国葬』も同じ。政府は人々の声を全く聞かない」と問題の根底にあるものが共通すると語った。集会の途中に駆けつけ、主催者からマイクを渡された福島みずほ党首は「岸田首相は統一教会と決別すると言うが、旧統一教会の広告塔だった安倍元首相の『国葬』を行なうことは矛盾するのではないか」と問いかけ、会場からの拍手を浴びた。
主催団体代表の藤田高景さんは「この集会を企画したのは1ヵ月前。その間、国葬反対の運動の盛り上がりを強く感じた」と言う。また、反対が過半数を超える世論の中、国葬を強行することに、「政界再編の呼び水になるのではないか」と述べ、「闘いはこれからが正念場」と訴えた。