社会新報

市民団体が安倍派幹部を脱税で告発~自民党ウラ金は逃がさない

「自民党の裏金脱税」刑事告発の後、記者会見が行なわれた。中央が藤田高景代表。(1日、参院議員会館)。

 

(社会新報2月22日号1面より)

 

 政治資金パーティーの売上に関わる自民党の裏金問題(メモ)が大きな批判を浴びている。
 神戸学院大学の上脇博之教授(憲法学)による刑事告発などもあり、東京地検特捜部の捜査が進んだ。
 だが東京地検は今回、自民党の最大派閥「安倍派」を含む派閥の幹部を1人も起訴しなかった。

期待外れの検察捜査

 政治資金規正法違反(虚偽記載)容疑で起訴した衆参議員は、安倍派の3人だけ。他に起訴したのは、同3議員の3秘書と二階俊博元幹事長の秘書、安倍派・二階派・岸田派の(元)会計責任者のみ。
 結局、東京地検は自民党の「大本」を起訴することなく、「枝葉」だけ少数を起訴し、1月19日に事実上、捜査を終えた。
 議員起訴の基準は、「5年間で3000万円超の裏金を取得し、かつ秘書などと共謀したか否か」だという。
 安倍派幹部らが起訴を免れたのは、議員側として裏金が3000万円を超えていないことに加え、「ノルマを超えた売上分が派閥側から議員側に還付されたのは知っていたが、一部が派閥側の収支報告書に不記載だとは知らなかった」「処理は事務方に任せていた」との主張を、地検がくつがえせなかったからだ。
 会計責任者が有罪になった場合に議員にも責任が及ぶ「連座制」が導入されなければ、「秘書がやった」「会計責任者がやった」という議員の言い逃れは、これからも続くだろう。
 「派閥が腐敗の温床」との批判が強まる中、岸田派・安倍派・二階派・森山派は解散を決めたが、14日現在、茂木派と麻生派は存続している。
 自民党は「派閥の解散」をこれまで何度も宣言しているが、そのたびに復活している。派閥は腐敗の「培養器」だろうが、問題の本質は別にあるはずだ。

自民党の“常識”の闇

 1月25日、自民党の岸田文雄総裁が本部長を務める「政治刷新本部」が「中間とりまとめ」を発表した。だが、▽政治資金規正法の厳格化▽政治資金パーティーの全面禁止▽企業・団体献金の禁止▽「連座制」の導入▽政策活動費や調査研究広報滞在費の使途公開―ーなどの具体策の提示は皆無だった。
 1月26日、通常国会が始まった。野党から政府・自民党への追及は激しさを増すが、岸田首相は漠然とした答弁に終始する。「今国会で政治資金規正法をはじめとする法改正を実現していく」とは言うが、具体策の提示はない。
 また首相は、裏金の温床となる「政策活動費」の使途公開義務化や企業・団体献金の禁止について、否定的な答弁に終始している。

焦点は脱税問題へ

 東京地検の捜査終了後、安倍派と二階派の議員が相次いで政治資金収支報告書を「訂正」している。この狙いは「『裏金』分は派閥から議員の政治団体に寄付された」と示すことだ。
 だが、安倍派の幹部だった萩生田光一・前政調会長の政治団体は、収入総額・支出総額・繰越額を「不明」とし、支出の細目も「不明」だらけだ。
 同幹部だった高木毅・前国対委員長の政治団体の「訂正」では、領収証がなく日付も金額も「不明」な支出が数多くある。
 松本剛明総務相は2月7日の衆院予算委で、「領収証などが災害などによって滅失した場合など、記載できない項目については『不明』と記載をし、確認できた範囲内で…」と苦しい答弁をした。
 国税庁幹部は「収支報告書に何を書いたかやどう訂正したかは、税務上は関係ない」と語っている(2月7日、朝日新聞「時時刻刻」)。つまり、収支報告書の訂正と課税は別問題ということだ。
 国民の関心は、税務当局が国会議員に対して庶民と同じ基準で税務対応をするか否かに集まっている。

脱税でも刑事告発

 1日、「自民党ウラガネ・脱税を許さない会」(藤田髙景代表)の12人は、萩生田氏ら自民党安倍派の10人が同派主催パーティーの一部売上金を裏金化し、所得税の課税を免れたとして、同10人を所得税法違反の疑いで東京地検に刑事告発した。
 告発後の記者会見で、長谷川直彦弁護士は「(売上金が)議員の懐に入った以上は収入だ。『政治資金だから非課税』とか『申告は必要ない』と言えないのは明らかだ」と強調した。
 今後、国会での論戦と税務当局の動きに要注目だが、検察審査会への審査申し立ても重要だ。
 (強制)起訴された議員が政治資金規正法違反で有罪確定となれば、公民権停止で議員失職になる。

<メモ>【自民党の裏金問題】自民党の安倍派を中心とする派閥が政治資金パーティーの一部収入を政治資金収支報告書に記載せず、また所属議員側もパーティー券(通常1枚2万円)の販売ノルマ超過分などを適正な会計処理をせずに「自由に使えるカネ」にしていた問題。
 議員側の裏金化の手法は、ノルマ超過分を派閥側から議員側に還流させる「キックバック」と、最初から超過分を議員側が手元に置く「中抜き」に大きく分けられる。