(社会新報4月18日号1面より)
自民党はパーティー券・裏金問題(メモ)の実態を明らかにしないまま、関係議員らへお手盛りの「処分」でお茶を濁そうとしている。
こうした中で、共同テーブル主催のシンポジウム「『金権』から『民権』へ 『政治改革』を問う」が4月1日に衆院第一議員会館で行なわれ、約200人が参加した。
自民は裏金常態化
最初に、自民党の裏金問題を告発・追及し続ける神戸学院大学教授の上脇博之(ひろし)さん(憲法学)が「政治改革を問う」と題してオンラインで講演した。上脇さんは、政治資金オンブズマンの代表でもある。
上脇さんは自民党の裏金問題について、「企業側がパーティー券を実際に買った金額は確認できない」とした上で、「企業にパーティー券を売ったことで裏金が作られた」と指摘した。
党本部や政党支部が受け取る企業献金についても「実際に企業側がいくら献金したかは確認のしようがない」とし、企業団体献金を原資とした政策活動費についても「裏金化は『合法的』とされているが、政治資金規正法の欠陥だ」と訴えた。
内閣官房報償費(機密費)についても、「内閣官房長官に支出されれば完了し、会計検査院でも領収証のチェックができない」として、裏金化の可能性を指摘した。
こうしたことから、上脇さんは「自民党は自浄能力をほとんど消失している」とし、その構造的原因として衆院選の小選挙区制や参院選の選挙区制を挙げた。さらに、その結果としての第一党への過大な議席配分と政党助成金の存在も指摘した。
その上で、完全比例代表制の導入を主張した。
小選挙区制と改憲
続いて、元参院議員の平野貞夫さんが講演した。平野さんは衆院事務局に33年間在籍し、その後に参院議員を12年間務めた。
平野さんは「私の信条は保守本流だ」としつつ、1960年代半ば以降の自民党の「どす黒い政治とカネ」の実態について語った。
その上で、衆院事務局時代の仕事について、「憲法を守るために人間関係が重要だった」とし、与党の自民党だけでなく社会党(当時)など野党との接点も多く、「両生動物みたいなことをやっていた」という。
また、上脇さんの選挙制度の話を受け、「自民党が悪い。憲法改正するための小選挙区制でしょ。そんな動機で選挙制度をもてあそぶのは間違いだ」と語った。
建前の「政治改革」
引き続き、社民党党首で参院議員の福島みずほさんと新社会党委員長で元衆院議員の岡﨑宏美さんも加わり、パネルディスカッションが行なわれた。コーディネーターは評論家の佐高信さんが務めた。
福島さんは、上脇さんと平野さんの話を受け、「やはり企業団体献金と政治資金パーティーを禁止し、軍需産業や原発関連を含めた大企業の利益のための政治を変えていく必要がある」と訴えた。
1994年の政治改革関連法案の衆院採決時に反対票を投じた岡﨑さんは、「私は当時、『守旧派』と言われた。だが(推進側の)大きな目的は、選挙制度を変えて小選挙区制を入れることだった」と当時の状況を語った。
上脇さんは、この問題を受け、次のように語った。
「94年の『政治改革』論議の際、(推進する側には)本音と建前があった。本音は、福祉を削って軍事大国化を推し進めること。小選挙区制にすれば自民党内のハト派を切れる、との思惑もあったはず。さらに政党助成金制度を導入して自民党を(経済的に)『国有化』することをもくろんだ」
福島さんは「小選挙区制導入の目的は社会党つぶしだった。小選挙区制では(自民党と政策の)似た『保守第二政党』ができ、多様な意見がつぶされていく」と問題点を語った。
岡﨑さんは、「当時、私たち(の多く)はある意味で(政治改革が必要という)建前の部分に踊らされた。二度とだまされてはならない」と注意を促した。
平野さんは、「日本のためにも、自民党をつぶさなければダメだ」と言い切った。
メモ【自民党のパーティー券・裏金問題】自民党の安倍派を中心とする派閥が政治資金パーティーの一部収入を政治資金収支報告書に記載せず、また所属議員側もパーティー券の販売ノルマ超過分などを適正な会計処理をせずに「自由に使えるカネ」にしていた問題。脱税の疑いも。
東京地検は1月19日、裏金問題に関わったとされる自民党の派閥幹部らを起訴せずに捜査を終えた。
自民党内では「処分」の大枠は示されたが、「甘い」「恣意(しい)的だ」との批判が渦巻いている。