(社会新報2月1日3面より)
イスラエル軍によるパレスチナ自治区ガザ地区への軍事攻撃は止まらず、昨年10月7日以降の同地区内の死者は、遺体が確認されたケースだけで2万4620人に上る(1月18日現在)。
こうした状況の中、共同テーブル主催の第8回シンポジウム「なぜ、いまガザ攻撃なのか~世界史におけるパレスチナ/イスラエル問題」が1月18日、衆院第一議員会館で行なわれた。会場はほぼ満席になり、200人以上が参加した。
真の現場は別にある
最初に、70回以上もパレスチナを訪問しているジャーナリストの小田切拓さんが「ガザ問題の表層と深層」と題する話をした。
小田切さんは、ガザ地区の実情を考える上で、「(真の)現場はイスラエルとかワシントンやヨーロッパにあったりする。そうした『現場』を見ないで語り過ぎるところに茶番が生まれている」と注意を促した。
また持論として、「イスラエルとしては(もともと)、ガザ地区の市民を『外に出す』ことを国際社会が『避難』ということにしてくれたら、この(今回のような)規模でなくても、やろうとしていたのでは」と語り、「もしガザ地区で追放が成功すれば、ヨルダン川西岸地区でも同じようなことが起きるだろう」と警鐘を鳴らした。
米国追随でいいのか
青山学院大学名誉教授の羽場久美子さん(国際政治学)は、「国際政治から見るパレスチナ・イスラエル問題」と題する話をした。
羽場さんは「昨年10月のハマスの襲撃を(多くの人が)テロだと言うが、イスラエルがガザで2万4000人以上を虐殺していることはテロではないのか。これがテロでなくて何なのか」と疑問を呈した。
その上で、この3ヵ月間の出来事を踏まえ、「米国やイスラエルは本当に民主主義なのか。根本的に考えなければならなくなった」と指摘した。
また、若い世代を中心に国際世論が米国やイスラエルにますます批判的になる中で、「私たちは米国にしがみ付くのではなく、新しい国際関係に依拠し、現状を分析し直さなければならない」と問題提起した。
国際司法の功罪
朝鮮大学校講師の前田朗さん(国際人権法・戦争犯罪論)は「ジェノサイドに抗する平和権の地平」と題する話をした。
前田さんは、世界の現状について「国連システムという建前上の『美しい物語』をつくっていても、実態的な支配(構造)として別の秩序が打ち立てられていく。そこを使い分けでやっているのが、現在の国際法と国際秩序だ」と指摘した。
そうした状況下で、「国際法は素晴らしい理念を掲げているが、現実との矛盾の中で引き裂かれている」とし、「それをどう動かして理念を実現していくかが重要だ」と訴えた。
質疑応答の中で、昨年末に南アフリカ共和国が国際司法裁判所に「イスラエルによるガザ攻撃はジェノサイド(集団殺害)だ」と提訴した件について、本紙記者が質問した。
前田さんは、「国際法上のジェノサイドという概念は、特定の集団を破壊する意図をもって、その集団のメンバーを(肉体的または精神的に)殺傷することなどだ」と解説した上で、有罪判決を得る上での最大の難点は「意図をもって行なったことを立証しなければならないことだ」と指摘した。
そのため、有罪を勝ち取るにはハードルが高く、結果は「微妙だ」という。
もしイスラエルが有罪にならない、つまりガザでの蛮行がジェノサイドと認定されない場合について、前田さんは「国際社会にとって『深刻』どころではなくなる」と危機感を表明した。