(社会新報2021年11月24日号3面より)
自衛隊は14日、沖縄県の宮古島に住民の抗議を無視して海自の輸送艦でミサイル等の弾薬を陸揚げし、陸自車両15台を使って陸自訓練場に強行搬入した。これに対して社民党の福島みずほ党首は、翌15日に開かれたオンラインの緊急シンポジウムに出席し、「南西諸島を再び戦場にしてはならない」と、自衛隊の強行搬入を強く批判した。
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中国海軍が東シナ海から太平洋に抜ける際に通過する宮古海峡を望む宮古島には、2019年3月に陸自の駐屯地が開設。同年4月には、住民への説明がないまま自衛隊が「警備に必要な小銃等の保管庫」として建設した施設が、実際は対舟艇・対戦車ミサイルや迫撃砲弾の弾薬庫だった事実が判明した。
このため自衛隊側はいったんこのミサイルを島外に撤去したが、翌20年3月になってミサイル部隊を新設。今年8月にあらためてミサイルを搬入しようとしたが、市側が「コロナの感染拡大の恐れ」を理由に難色を示したため、延期されていた。自衛隊は公表していないが、今回搬入されたのは、すでに奄美大島に配備中の、中国軍艦を狙う12式対艦ミサイルと、03式中距離地対空ミサイルと見られる。
市民60人が搬入NO
これに抗議して宮古市では13日、市民団体「宮古島平和ネットワーク」が「弾薬搬入抗議集会」を開催。参加した市民約60人が「搬入NO」と書かれたプラカードを掲げ、「絶対に許さない」とシュプレヒコールを上げた。また翌14日も早朝から、搬入された同島の平良港埠頭(ふとう)に横たわるなどして阻止を試みたが、警察によって強制排除された。
ミサイルは配備されたものの、問題だらけだ。まず、自衛隊の火薬取締法違反の疑いが指摘されている。同法では、最大弾薬量3・7㌧の貯蔵庫は一般家屋から250㍍の保安距離を置くことが義務付けられている。
だが今回搬入されたミサイルを含む保良地区にある陸自弾薬庫の推定弾薬総量は約12㌧に達するにもかかわらず、民家から250㍍しか離れていない。しかも自衛隊は貯蔵弾薬量を明らかにしておらず、意図的に同法の適用を逃れようとしている姿勢が露骨だ。
保護計画のずさんさ
次に、戦争に直結する攻撃兵器が配備されたのに、「武力攻撃等における国民の保護」を名目とした08年策定の宮古市の「国民保護計画」は、陸自弾薬庫を標的とするミサイル攻撃について考慮していない。
一方的に住民を有事に巻き込むような環境が自衛隊によってつくられながら、肝心の住民の避難・退去を含めた保護策はまったく空白なのだ。自衛隊は2000年代から「島しょ防衛」を掲げ、南西諸島の軍事化の名目にもしてきたが、最初から市は無論、国や県の「保護計画」も、島民4万9000人の実効性のある「保護」について具体的に検討していない。
しかも自衛隊の「島しょ防衛」構想によれば、いったん島が外国に「占領」された後に、陸自の「水陸機動団」を中心とした「奪還作戦」を展開するという。にもかかわらず、宮古島がそうした「作戦」の戦場になった時に、どうやって住民を島から避難させるのかについて、自衛隊は何ら示していない。
対中国戦の本格準備
最後に、そもそも何のためのミサイル強行搬入なのか、目的が不透明だ。米軍は鹿児島県南部から奄美、沖縄を経由し、台湾、フィリピンからボルネオ島にいたるラインを「第一列島線」と呼び、そこに兵力を集中して中国海軍を封じ込め、攻撃する戦略を立てている。
日本には、中国との間で軍事力で解決しなければならない問題は存在せず、中国が島に「侵攻」する必然性も皆無に等しい。だが自衛隊が進めている南西諸島の軍事化は、日本の「防衛」とは無縁な、米軍と一体化した、中国との本格的な戦争準備そのものだ。中国海軍が公海である宮古海峡から太平洋に航行しようが、日本がそれを対艦ミサイルで攻撃しなければならない理由などない。
自衛隊は16年に、与那国島に沿岸監視隊を創設。22年には石垣島の陸自駐屯地開設と、23年までの沖縄本島うるま市の勝連分屯地での対艦ミサイル配備を予定している。同時にこの19日からは、初めて沖縄県内の民間港を使用した陸・海・空の3万5000人規模の統合演習が始まった。こうした南西諸島の巨大な軍事化の一環として、今回の宮古島のミサイル搬入が強行されたのである。
これについて福島党首は前述のシンポジウムで、「日本の将来が激変する問題で、戦争への関与そのものだ」と警告したが、自衛隊が戦後の平和を最終的に終わらせようと動きを強めているのが実態だ。