社会新報

被害と加害の両面の継承を ~「村山談話の会」敗戦80年シンポに300人

シンポジウムには約300人が集まった。発言者は東郷和彦さん。(8月14日、衆院第一議員会館)

 

(9月4日号より)

 

 村山首相談話を継承し発展させる会が主催するシンポジウム「太平洋戦争終結80年 日本の敗戦80年 平和な世界の構築にむけて」が8月14日、衆院第一議員会館で行なわれた。会場には約300人が詰めかけ、ほぼ満員になった。

村山談話を活かして

 主催者あいさつで同会の藤田高景理事長は、1995年に村山富市首相が「戦後50年」談話で植民地支配と侵略によってアジアの人々を苦しめた歴史事実を認めて反省と謝罪の言葉を述べたことを取り上げ、「私たちは、村山談話の歴史的意義を踏まえて今後の行動を考える必要がある」と語った。
 来賓あいさつで東アジア共同体研究所理事長の鳩山友紀夫(※由紀夫)元首相は、「村山談話の意味することを心にとめる機会になることを願っている」と述べ、偏狭なナショナリズムが高揚する昨今の日本の状況に危惧の念を示した。
 呉江浩・中華人民共和国駐日本国特命全権大使は、「歴史問題を正しく認識し処理することは、中日関係の再建と発展にとって重要な政治的基礎だ」とし、両国の共通の責任として、「国連を中心とする国際システムを堅持し、地域および世界の平和的な安定発展を推進すること」を挙げた。

加害の記憶の継承も

 この後、明治大学教授の山田朗さん(日本近現代史)が、「平和創造のために引き出すアジア太平洋戦争の教訓」と題する講演を行なった。
 山田さんは、メディアなどによる日本人の戦争の記憶継承が「被害の記憶」に傾斜しがちで「加害の記憶」が圧倒的に不足しているとして、「加害の記憶が伴わないと、戦争の全ての記憶が継承されたことにはならない」と指摘した。
 このアンバランスの原因として、「戦争と植民地支配と国内での抑圧がバラバラに捉えられている」ことを挙げた。
 山田さんは戦前日本の歴史を振り返り、「戦争が植民地支配と国内暴力を生んだ」と言う。
 日本は台湾や朝鮮半島の支配権を狙い、日清・日露戦争へと突き進んだ。
 朝鮮半島での植民地戦争と同時並行で、日本国内でも反戦・反植民地支配勢力への弾圧が強まり、1910年には韓国併合とともに日本国内では反戦派弾圧の大逆事件が起きた。
 山田さんはこうした流れの構造について、「戦争が植民地支配を生み、それがベースになって新たな戦争が行なわれる時、国内での反戦派をいかに抑えるかが大きな課題になった」と解説した。

現在の戦争を考える

 こうした戦争と植民地支配によって「特に中国や朝鮮に対し『日本は上にいる』という考えが日本人に刷り込まれ、こうした意識が関東大震災時の朝鮮人虐殺に結びついた」と言う。
 山田さんは、「軍隊は外敵に備えるだけでなく、内敵にも備える。25年の治安維持法制定はそのためだが、国内で反戦派が弾圧されると、次の戦争が生み出された」と指摘した。
 こうして、31年の満州事変、37年からの日中戦争、41年からの米英などとの全面戦争に至り、日本は敗戦した。
 山田さんは最後に、次のように語った。
 「過去の戦争への洞察力を高めるために、現在の戦争を見る必要がある。同時に、過去の戦争を見ることで、現在の戦争を批判する力を持つ必要もある」
 「植民地支配について実感が湧かない人は、現在のガザ戦争を見ればいい。植民地戦争そのものであり、それが国内の抑圧と新たな軍拡と戦争を生んでいく」

台湾有事はほぼない

 続いて、東アジア共同体研究所理事の高野孟さんが、「『台湾有事は日本有事』というデマを粉砕しよう!」と題する講演を行なった。
 日本では数年前から「中国が2027年にも台湾に侵攻を仕掛ける」などとする台湾有事論が喧伝(けんでん)されるが、高野さんはこれを「米国発のデマであり、飛躍した話だ」と批判した。
 こうした米国発の言説を元に安倍晋三元首相(故人)らは「台湾有事は日本有事」と危機をあおり、日本の一部メディアはこの策動に巻き込まれたという。
 高野さんは根源的な問題として、「台湾問題は中国の内政であり、(日米などによる)軍事介入は国際法上、中国に対する侵略になる」と指摘した。
 その上で、「台湾が『独立する』と言わない限り、中国には軍事力を行使する理由がない」と言う。だが、米軍が中国に軍事攻撃した場合は別だという。
 その場合、出撃地となる在日米軍基地は中国の攻撃対象となり、さらに日本も武力行使に加われば、日本も攻撃対象になるという。
 これらを総合して、高野さんは「台湾有事は99・9%起こらない」と語った。

東アジアに平和を

 この他、各界から数人の発言もあった。
 北東アジア動態研究会主宰でジャーナリストの木村知義さんは、「敗戦80年」に超えるべき課題と向き合う視座として、日本人の多くには「(戦争責任の直接の)罪はないが、(歴史を認識する)責任はある」などと語った。
 元外務省条約局長の東郷和彦さんは、日本が果たすべき平和構築として、「東アジアで絶対に戦争を起こさせない」ことを挙げた。
 そのためにも、「一定の抑止を否定する必要はない」としながらも、「抑止の後には必ず外交を通じて相手国との信頼関係を築くことが必要だ」と語った。
 この他、京都大学教授の高山佳奈子さん(刑事法学)が「国際学術交流を通じた平和貢献」について、一橋大学名誉教授の田中宏さん(日本アジア関係史)が「外国人の地方参政権の必要性」について、東京造形大学名誉教授の前田朗さん(戦争犯罪論)が「日本における国際基準の人権の必要性」について発言した。

 

2013年から「鳩山 友紀夫」に改名したと本人の公式サイトで表明し、メディア出演時に使用している。