社会新報

日中平和友好条約45周年シンポジウム~「台湾有事」を避けるために

(社会新報8月23日号3面より)

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記念講演で浅井基文・元広島平和研究所所長は、日本は米中いずれの側にも与することなく、独立自主外交を営むべきと強調(10日、衆院第一議員会館)。

 

 昨今、日本国内で「台湾有事」の可能性が喧伝(けんでん)され、日中関係を危ぶむ声が広がりつつある。

 そうした中で、「日中平和友好条約締結45周年記念大集会」が10日、衆院第一議員会館で開催された。主催は同実行委員会。会場は約300人で満席になった。

相互尊重と友愛精神

 来賓あいさつとして、東アジア共同体研究所理事長の鳩山友紀夫(由紀夫)元首相が「日中両国がお互いの違いを認め合い、相互尊重することが必要」とし、「台湾問題は中国の内政問題なのだから、日中共同声明(メモ①)の立場に戻り、日本は『台湾の独立は支持しない』と表明することが肝要だ」と強調した。

 中華人民共和国の呉江浩駐日本国特命全権大使は、「重要なのは日中平和友好条約(1978年)の義務を誠実に履行することだ」として、「初心を揺るがすことなく、堂々と中日友好の旗を高く掲げ、ウィンウィンの協力を堅持しなければならない」と語った。

日本は自主外交を

 外務省中国課長などを歴任して広島平和研究所長も務めた浅井基文さんが、記念講演を行なった。

 浅井さんは、喧伝される「台湾有事」問題について、「中国は内政問題と捉えているが、米国は国際問題と考えている」と両国の立場の違いを強調した。

 米国はこの認識から台湾関係法を制定し、イザとなれば台湾に武力干渉できる余地を残したという。

 日中間でも、日中共同声明に見られるように「玉虫色の解決」が図られた。

 浅井さんは「中国政府は『九二共識(コンセンサス)』(メモ②)を順守するよう求めているが、米日は中国に対し『台湾に武力行使しないと約束しろ』と迫っている。中国としたら『国内問題だ』との認識があり、対立が生じている」と解説した。

 中国政府の基本姿勢は「一つの中国」「一国二制度」であり、台湾が独立を強行すれば「武力をもって阻止する」との方針は一貫している。

 こうした経緯から、浅井さんは「台湾が独立の方向に進めば、中国は武力解放しか道がなくなる」と警鐘を鳴らす。

 中国が台湾に武力侵攻し、これに対して米国が軍事介入した場合、日本はどうするのか。

 浅井さんは、日本が在日米軍基地の使用を認めたり、日本自身が軍事介入に加われば、日本全土が『火の海』になることは避けられない」と警告した。

 その上で、こうした事態を避けるために、「日本は米中いずれの側にも与することなく、独立自主外交を営むことを学び取らなければならない」と提言した。

 さらに、浅井さんは南シナ海の問題にも言及し、中国側の言い分の正当性を強調し、「米国の主張は100%間違っている」と言い切った。

「台湾有事」論のウソ

 各界からの発言者の一人として、元経産官僚の古賀茂明さんは、「台湾有事」問題に関する次のような視点の重要性を強調した。

1.「2027年までに中国は台湾を武力統合しようとしている」はウソだ。

2.もし台湾有事があるなら、米日が起こすケースしか考えられない。

3.日米は台湾に対し、「中国が武力侵攻したら軍事介入する」という間違ったメッセージを送っている。

4.日本は台湾を守る義務を負っていない。

5.台湾有事を止めるには、日本が日米安保条約の「事前協議」を盾に、在日米軍基地の使用を断ればよい。

 

 メモ①【日中共同声明】1972年に発表された日中国交正常化に関する共同声明。第3項で、中国政府は台湾が中国の領土の不可分の一部であることを表明し、日本政府はこの中国の立場を「十分理解し、尊重し」とした。

 メモ②【九二共識(コンセンサス)】中国と台湾は1992年、「一つの中国」の原則について話し合った。だが、台湾側は「定義は棚上げされた」旨を主張する一方で、中国側は「一つの中国の原則を確認した」とするなど、両者で認識が一致していない。