(社会新報3月28日号1面より)
自民党二階派の政治資金パーティー収入の裏金問題と「書籍代3500万円」で話題になった二階俊博元幹事長。二階氏は、派閥から自分の資金管理団体にキックバックされた裏金の使途を2月14日に公表、20~22年の3年間に3500万円もの書籍を購入していたことを明らかにした。家を買えるほどの金額の政治資金で、自分の宣伝本や近しい政治家の本を大量に買いあさる二階氏の金満ぶりに、ネット上では「税金を使った自己PRがまかり通るのか」との批判が噴出した。
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「自分の宣伝本を税金のかからない“裏金”などの政治資金で大量購入し、平然としているのはあまりに庶民感覚からずれている」(ある全国紙の元政治部長)
二階氏については幹事長時代に自民党から受け取った約48億円の政策活動費の使途にも関心が集まっているが、二階氏は政治倫理審査会に出席せず、説明責任を果たしていない。
二階氏が購入した本で最も金額が多いのは『ナンバー2の美学 二階俊博の本心』(5000冊・約1045万円)。監修者の大中吉一氏は『月刊公論』発行人。同誌ホームページによると大中氏は「19歳で財界通信社を設立」、「インタビューを通じて培った人脈は政財界に広く及び、その唯一無二のネットワークによるロビー活動には定評がある」という。
監修者の大中氏とは
自民党関係者が語る。
「大柄で赤いマフラーがトレードマーク。大中氏は永田町では有名人で二階氏とは大親友の間柄。麻生太郎副総裁とも懇意だ。『ナンバー2の美学』は二階氏が大中氏に頼み、『公論』の林渓清編集長がインタビューして執筆。二階氏側が大量に買い取ることを条件に出版された」
この本とは別に、二階氏は『月刊公論』20年2月号を2000冊、約187万円で購入している。
二階氏は、作家の大下英治氏の著書も大量に購入している。二階氏は、大下氏の『最長幹事長』(3000冊、231万円)や『自民党幹事長 二階俊博伝』(300冊、約45万円)、『二階俊博の政界戦国秘録〈5〉』(500冊、約34万円)など二階氏の人物像を紹介する本を大量購入する一方、二階氏の盟友の小池百合子東京都知事について大下氏が書いた『小池百合子の大義と共感』(3000冊、396万円)や、懇意の菅義偉前首相を取り上げた『内閣官房長官』(2000冊、約157万円)といった他の政治家に関する本も大量買いしている。二階氏側が買った大下氏の著書の総額は1408万円に上る。
また二階氏は、政治家の自著も大量買いしている。かつて二階氏が所属していた自民党田中派時代の仲間である故・石井一元参院議員(元民主党副代表)の3冊の著書を合計900冊、約139万円分購入しているほか、自民党安倍派の山谷えり子・元国家公安委員長の『新しい「日本の歩き方」』を1000冊、154万円分、二階派の松波健四郎元衆院議員の本も200冊、約32万円分購入している。
二階流の人心掌握術?
「“二階関連本”の出版や、それが新聞広告などに載ることは、二階氏自身のイメージアップになる。それにしても関連本を政治家が100冊ぐらい買うことは珍しくないが、一度に3000冊なんて大量買いはけた違い。金のある政治家でないとできないこと。また親しい政治家の本を買ってあげるのは二階流の人心掌握術の一つだ」(前出の元政治部長)
二階事務所は本の大量購入の目的について、「議員活動としての政策広報」と「政策広報のため与野党の政治家や関係者より著書を紹介されまとめて購入した」と説明。二階氏自身の議員活動を記した本については、「出版社(作家)より出版構想並びに最低買取り数量を提案され購入」したとし、本の配布先として「選挙区外の行政や議会関係者、その他、関連する関係者など」を上げている。
公選法に抵触の可能性
だが『ナンバーワン2の美学』や『最長幹事長』などの本は、総選挙があった21年に大量購入されており、もし二階氏の選挙区の有権者に無料配布されていたら公職選挙法に抵触する可能性がある。
政治家の活動を紹介する本を政治家が大量にまとめ買いした事例としては、故・安倍晋三元首相の資金管理団体が文芸評論家の小川栄太郎氏の著書『約束の日 安倍晋三論』を2380冊、約348万円購入したと『しんぶん赤旗日曜版』で報じられたことがある。
それによると、小川氏は安倍氏が自民党総裁に復帰した総裁選直前の12年8月末に『約束の日』を出版。すぐにベストセラーになったが、からくりがあった。安倍氏の資金管理団体は大手書店の丸善丸の内本店、紀伊国屋書店で各900冊ずつ大量買い。大手書店で販売実績1位になったことが新聞広告に載り、ベストセラーとなったというのである。
二階氏は説明責任を果たすべきだ。