(社会新報2021年4月7日号2面より)
福島みずほ党首と党新潟県連代表の小山芳元新潟県議など地元議員らで構成する党調査団が3月21日、柏崎刈羽原発を訪れ、石井武生所長との面談・調査を行ない、福島党首は「東電には原発を動かす資格はない」と厳しく批判した。
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同原発をめぐっては、さまざまな失態が相次いでいた。所員が同僚のIDカードを持ち出して中央制御室に不正に入室していた問題や、7号機の安全対策工事の完了を東電は発表したものの、未完了や不備が発覚して発表を撤回したこと、長期間にわたりテロ対策である核物質防護設備の故障や侵入検知装置が不備であったのに放置してきたことーー。
これらの失態に対して、16日には原子力規制委員会が4段階の最低である「赤」の評価を下した。さらに規制委は24日、テロ対策設備の不備が長期間続いていた問題で核燃料の移動を禁じる是正命令措置を出す方針を決めた。
「看過できない問題」
21日の面談で福島党首は「看過できない問題」と東電を強く批判。党新潟県連は、原発運転事業からの撤退を求める決議文を東電に手渡した。
面談終了後、党首は小山県議と共に記者会見に臨み、「ID不正利用、安全対策工事未了のミス、核物質防護設備の故障の3点などについて、議論と交渉を行なった。話してみて、東電は6月に同原発を再稼働するため、あらゆることをとても急いでやったのではないかと思った」と指摘。「現場の準備などを無視し、再稼働ありきで突っ走ったことにより、さまざまな矛盾、不祥事が出てきた」との見方を明らかにした。
「核防護設備」の故障
次に「IDの不正利用は昨年9月。直後に地元などに報告すべきところ、柏崎市への説明は2月25日と非常に遅かった。内部告発がなければ、国会にも地元にも明らかにされなかった可能性もある。また規制庁の抜き打ち検査で、核防護設備の故障について、現場は代替処置に実効性がないと認識していたのに改善しなかったことが分かった。上層部が知っていて握りつぶしたのか、それとも現場の判断が上層部に伝わらなかったのか、質問したがはっきりしない。どちらにしろ、重大な問題に関し現場の認識が会社全体に共有されておらず、放置された。こんなに危険なことはない」と憂慮。「今日、国会では分からなかったことが明らかになり、交渉することができてよかった」と語った。
東電側の説明について、党首は「日曜にもかかわらず対応してくれたことには感謝しているが、まったく納得がいかない。命や安全より再稼働に向けて突っ走った東電には、原発を動かす資格がない」と厳しく評価。今後は「どうやって廃炉に向け、産業構造の転換をはかり、地域を応援するのか、具体的に提案しながら一緒に地域の中で頑張っていきたい」と表明した。
小山党県連代表は、「柏崎刈羽原発を再稼働させないため、来年の県知事選のあり方を検討していく」と語った。
新潟県柏崎市と刈羽村にまたがる東京電力の原子力発電所。総発電出力は世界最大級の821.2万kW。現在、7基全ての原子炉が止まっている。東電は6、7号機の再稼働を目指し、2017年12月には国の原子力規制委員会が新規制基準に合格したと認めた。しかし、規制委は21年3月、同原発のテロ対策設備の不備が長期間続いていた問題で法令違反があったとして、東電に対して同原発内の核燃料の移動を禁じる是正措置命令を出す方針を決定。事実上、同原発は運転禁止状態となった。
記者会見を行う福島党首と小山新潟県連代表(右)=3月21日、柏崎市内。
小山党県連代表が石井所長(左)に原発運転事業からの撤退を求める決議文を手渡した。
東電の柏崎刈羽原発所長ら(手前)に要請する党調査団。