(社会新報4月11日号2面より)
3月19日、大椿ゆうこ副党首が参院予算委員会で質問に立った。まずは加藤鮎子・内閣府特命担当大臣(こども政策・少子化対策・若者活躍・男女共同参画)に少子化の原因についての認識を問うた。
大椿議員が「少子化の一番の原因は規制緩和による非正規雇用の拡大と考えているが、大臣はどのように考えているか」とただしたのに対し、加藤担当相は正規雇用・高所得者の方が有配偶率が高い傾向にあると指摘されているところであり、「自分もその要因が非常に大きく影響していると考えている」と答えた。
少子化問題で政治の不作為
さらに「繰り上げ当選して以来、岸田首相は非正規雇用の拡大が少子化に拍車を掛けたと絶対に言わないことを、非正規雇用の当事者として疑問に感じていた。岸田首相が言うコストカット最優先の30年間が少子化を招いた自覚はあるか」と重ねて問われた加藤担当相は、「雇用施策がこれまで足らなかったという認識はある」とこれまでの政治の不作為を認め、「『こども未来戦略』では、若者・子育て世代の所得を伸ばさない限り少子化を反転させることはできないと明記」しており、「賃上げを持続的・恒常的にするための労働市場改革、同一労働同一賃金の徹底、非正規労働者の正社員化への支援などをしっかりと推進していく」と答えた。
続いて武見敬三・厚生労働相に、最低賃金の引き上げについてただした。「2030年代半ばまでに最低賃金を1500円にする」という岸田首相の目標設定を「遅過ぎ・低過ぎ」と批判し、その根拠をただす大椿議員に対して厚労相は、「各地の最低賃金は最低賃金法第9条第2項に定める3つの決定基準(地域における労働者の生計費・賃金・通常の事業の賃金支払能力)を考慮して最低賃金審議会が決定する」との原則を繰り返すにとどまった。
政府参考人によれば、毎年3・4%ずつ賃上げをすれば2035年までに最低賃金を1500円にすることが可能とのことだが、物価高・インフレを考えれば賃上げとは言えない。厚労相は、大企業の春闘で賃上げ回答が続いていることを「出だしは絶好調」と評価したが、最低賃金水準で働く非正規労働者に波及しているとは言えない。
最低賃金引き上げ努力を明言
「今の最低賃金では暮らしていけない人が山ほどいる。国・地方がそのような設定を行なっていることをどう考えるのか」と問われると、「生活保護や、今国会に改正案を提出している生活困窮者自立支援法等の制度で対応する」とピントの外れた答弁を返す厚労相に対し、大椿議員は「最低賃金が低く、雇用が不安定だから生活困窮者が生まれるのではないか」と追及を重ねた。やり取りを重ねる中で、厚労相から「労働者の生計をしっかり考えるのは労働政策として当然なので、2030年代を目標とはしているが、できるだけ早く最低賃金引き上げの努力をする必要性があると思っている」との答弁を引き出した。
一方、厚労相が頑として首を縦に振らなかったのが最低賃金の全国一律化だ。2023年には、最低賃金の全国一律化を求める意見書が、過去最多の全国80地方自治体議会で採択された。最低賃金の地域間格差が地方から都市への人口流出を誘発し、外国人労働者の転籍を制限する理由にもなっているのではないかとの指摘に対し、厚労相は「全国一律の最低賃金にすると、地方で急激に人件費が増加し、賃金の支払原資の確保が難しくなるような中小企業が出てくる恐れがある」と繰り返した。