社会新報2022年7月6日号3面【主張】より
司法が差別を容認した。
6月20日、同性どうしの結婚を認めていない民法や戸籍法は、「法の下の平等」を定めた憲法14条や、「婚姻の自由」を保障した憲法24条に違反するとして、香川県や京都府などの同性カップル3組が国に損害賠償を求めた訴訟(通称「結婚の自由をすべての人に」訴訟)の判決が、大阪地裁で言い渡された。
土井文美裁判長は、「憲法に違反しない」として原告の訴えを棄却。昨年3月の札幌地裁判決では、国家賠償は認めなかったものの、「同性婚を認めないのは違憲」との画期的な判決が出されただけに、当事者の落胆は大きい。
この日の判決は、同性婚が認められない不利益には言及したものの、「結婚類似の制度やその他の個別的な立法」によって緩和できるとした。つまり司法は、一向に同性婚の法制化を進めない国の姿勢を盾に、現状での判断を避けたのだ。
訴訟の名前を「結婚の自由をすべての人に」としたのには意味がある。求めているのは、別途同性婚の制度を作ることではなく、民法の対象を同性婚にも広げること。現行の制度を異性カップルに限らず、戸籍上の同性カップルにまで適用してほしいと考えるからだ。別途制度を作るのでは、差別と変わりない。
「同性婚を認める法整備を怠ってきた立法不作為の責任がある」と賠償を求められている国は、憲法24条の「両性の合意のみ」とは「男女を表すことは明らかだ」とし、婚姻制度の目的は「一人の男性と一人の女性が子どもを産み、育てながら共同生活を送る関係に法的保護を与えること」であると反論。そこに同性婚は該当しないとした。
しかし、異性カップルであったとしても、子どもを持たない、持てなかったカップルはいるわけで、結婚は生殖のためだけにはあるのではないことは明らかだ。それを条件に、同性愛者を制度から排除することそのものが差別である。
最近、チーム社民党の参院選候補が街頭に立つと、「同性婚の法制化を実現してください」と若者に言われる機会が増えた。その一言を伝えるために、街頭演説を聞きに来てくれた女性カップルもいた。社民党が、LGBTQ差別解消法や同性婚の法制化に積極的に取り組む政党であるとの理解が広がっている。
当事者たちは、国が法制化しないから裁判をするしかなかったと言う。この問題は国が問われているのだ。
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