福島第一原発構内の視察を終えた社民党と正義党の参加者が記念撮影（６月２３日、富岡町内）。
韓国の正義党と社民党、原水禁などが交流。中央は福島党首（６月２２日、衆院第二議員会館）。
（社会新報７月５日号１面より）
東京電力福島第一原発事故で発生した処理済汚染水が今夏にも放出される計画がある中、社会民主党全国連合と党脱原発・脱プルトニウム全国協議会（高橋新一会長）は６月２３日、韓国の革新系政党「正義党」の国会議員らと共に福島第一原発構内を視察した。
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視察には汚染水問題に詳しい専門家の長沢啓行さん（大阪府立大学名誉教授）や振津かつみ医師（福島県民会議・チェルノブイリ救援会）をはじめ、韓国で脱原発政策を掲げる正義党の国会議員や環境団体の役員、大椿ゆうこ社民党副党首（参院議員）、全国から原発を抱える地域の活動家ら３６人が参加した。
原発構内に入ると入退域管理棟前で下車し、入構手続きを行ない、金属探知機、ホールボディカウンターを通り、ポケット線量計を装着し、構内視察バスに乗車した。原子炉建屋に向かうと線量計の数値は上がる一方で、１号機のすぐ西側の高台にて全員下車。屋外線量表示器によると毎時６０マイクロシーベルトだった。「こんなところで」と視察団一行は驚きの表情だったが、「１０分間で終わります」と東電側が説明した。１号機は水素爆発時のまま、ねじ曲がった鉄骨があらわになっていた。２～４号機も視察。その後、全員で記念撮影をしてバスに乗った。この時、放射線表示器は毎時４５マイクロシーベルトと非常に高かった。
次に向かったのは免震重要棟だ。ここは吉田昌郎所長（当時）をはじめ「福島５０」といわれた東電社員が奮闘した拠点。最後に向かったのが「海側設備」と呼ばれる、約束違反の汚染水海洋放出設備である。「関係者の了解なしにはいかなる処分もしない」と約束しておきながら今月には試運転まで強行した東電に対して、「約束違反の行為を中止しろ」との声が飛んだ。
構内はきれいになっていたが、まだまだ高線量の区域が多く存在している。視察団が受けた線量の積算は０・０１～０・０２マイクロシーベルト。ほとんどが原子炉建屋視察の１０分間での被ばくである。これから何十年かかるか分からない廃炉作業で被ばく労働を続ける数千人の労働者の健康を思わずにはいられない視察であった。
長沢さん反対根拠示す
視察終了後、富岡町内でミニ報告集会を開催した。
長沢啓行・大阪府立大学名誉教授は、東電が汚染水を放出する理由を次のような視点で批判した。①タンクが敷地内で満杯になる（反論：１２万平方㍍の増設余地・空き地がある）②タンクが敷地利用の妨げになる（同：急ぎの敷地利用計画はない）③汚染水は止められない（同：汚染水発生ゼロは可能である）と東電の言い分に反論した。
長沢さんは多核種除去装置（ＡＬＰＳ）で処理されたトリチウム汚染水の海洋放出に反対する根拠として、海洋処分を禁じた１９７２年のロンドン条約や被ばく線量限度を定めた国内法に違反していることなど５点を強く指摘。６月末までに東電が文書回答を約束していると述べた。
大椿副党首は、全漁連などが海洋放出に反対している今、「関係者の理解なしにいかなる処分も行なわない」との政府・東電と漁連関係者の文書での約束（２０１５年）は守られなければならないと述べた。
正義党の裵晋教（ペ・ジンギョ）院内代表は感想として「韓国世論は８４％の人が汚染水放出に反対。韓国政府は日本政府には何も言っていない。放出反対だけでなくタンク増設などの代案があることを知った」と語った。同じく正義党の姜恩美（カン・ウンミ）議員は「海への放出に反対するだけでなく、その原因である原発をやめさせること。両国の政党・市民の連携が必要だ」と訴えた。
最後に同協議会の佐藤龍彦事務局長が「東電の約束違反に対峙（たいじ）し、国内外の世論に汚染水放出反対を訴えていく。毒は毒。神聖な海を汚してはならない」と力を込めて語った。
日韓の環境団体交流
福島現地視察の前日である６月２２日、衆院第二議員会館で、社民党の招待で来日した正義党の国会議員や「韓国環境運動連合」が、原水禁や「さようなら原発１０００万人アクション」、市民運動団体の代表らと交流を深めた。
藤本泰成・原水禁共同議長から、汚染水放出反対の取り組みや今年の原水禁世界大会でこの問題の国際シンポジウムを開くことなどが報告された。
交流会には、福島みずほ党首、大椿ゆうこ副党首、服部良一幹事長らも参加。関連して同日、全漁連は都内で総会を開き、海洋放出に引き続き反対するとの特別決議を採択した。
メモ【正義党】２０１２年に結成された韓国の革新系政党。党代表は李貞味・国会議員。「韓国型社会民主主義」を目指す。２０年の総選挙で６議席を獲得。社民党とは友好関係にある。今年５月、服部良一党幹事長が訪韓し、正義党の李代表らと会談。①福島第一原発汚染水の海洋放出に反対する②徴用工問題で日本政府の誠意ある謝罪と加害企業の損害賠償を求める③日米韓の軍事同盟強化と日本の平和憲法の改悪に反対するーーことなどで合意した。