(8月28日号より)
6月27日、最高裁は2013年から3回にわたった生活扶助基準の引き下げと保護費の減額について、「違法」とする判決を下した。「いのちのとりで裁判」と呼ばれるこの裁判では、社会保障審議会生活保護部会での議論もなしに、「デフレ調整」と称する独自の指標を導入して強引に基準生活費を減じたことが、厳しく断罪された。1000人を超える原告が各地で裁判を提起し、10年以上にわたって闘ってきた。
この間、全国で31の訴訟が争われ、23年11月の名古屋高裁の判決では、国に「少なくとも重大な過失」があり違法性は大きいとして、国に損害賠償を命じる判決が下されている。他6件で原告側の主張が認められていたが、大阪高裁判決など5件では敗訴しており、最高裁の判断が注目されていた。
生活扶助基準の引き下げ問題は、2008年の金融危機下で吹き荒れた生活保護バッシングを背景に、野党だった自民党が「生活保護10%引き下げ」を公約に掲げ、第2次安倍政権下で強行したものだ。平均6・5%、最大10%(年間削減額670億円)という生活制度史上最大の保護費引き下げは、「個人の尊厳」(憲法13条)、「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」(憲法25条)を一方的に奪う重大な違法行為であり、対象者の命にすら関わりかねない問題である。からくも司法が行政の暴走に歯止めをかけたことを、心から歓迎したい。
厚労省は8月13日、解決策を練る専門委員会の会合を開き解決策の検討を始めた。原告側は、生活保護費が減らされた全員に減額分を追加支給することを求めているが、これを受け入れるかどうかも検討するという。敗訴から2ヵ月近い空白期間も異例だが、展開も意味不明だ。行政の行為が最高裁から否定されたのだから「受け入れない」という選択肢はあり得ないだろう。原告の被害の回復のためには専門委の設置など不要であり、政府は直ちに基準を元に戻し、被害の回復に取り組むべきだ。
原告1027人のうち、すでに232人が判決を前に亡くなった。光熱費、物価の上昇、大企業の賃金アップなどが報じられているが、生活保護利用者や引退世代は完全に置いてけぼりだ。厚労省はひとごとのように審議会の立ち上げるのではなく、まず原告や制度の利用者に謝罪し、補償・検証に省を挙げて取り組むよう求めたい。