社会新報

【主張】原発事故「3つの検証」~不十分な総括を許さない市民検証運動に注目

(社会新報11月9日号3面より)

 

 2011年3月11日に起きた東京電力福島第1原発事故をめぐり、新潟県は事故原因、事故による健康と生活への影響、安全な避難方法の「3つの検証」を行なうため、3つの委員会を17年に設置した。事故原因については、03年に設置されていた技術委員会で検証することとし、各委員会の個別の検証を総括するため、さらに検証総括委員会を設置した。
 これほどの検証を一地方自治体が行なうのは初めての試み。16年知事選で市民と野党の共闘で新知事を誕生させた成果でもあった。この知事のもとで検証作業が進めば、素晴らしい検証結果が間違いなく得られたであろう。
 だが残念なことに、不祥事で知事が退任し、18年以降、自民系の知事に替わった中での検証作業となり、最終的に検証総括委員長のクビが切られ、9月22日の当欄で指摘した通り、検証結果は全く不十分な「総括」報告となった。
 しかし、柏崎刈羽原発と巻原発の設置反対運動を70年代半ばから闘ってきた新潟県労働組合評議会の流れをくむ県平和運動センターや社民党の活動家たちは、この事態を看過できないとして、新たな運動の地平を切り開こうと取り組みを進めている。それが、原発市民検証運動であり、道半ばで終わってしまった検証総括を専門家とともに市民自らが行なおうというものだ。不当にも仕事をできなかった池内了元検証総括委員長を中心に、市民の力で「県民の、県民による、県民のための検証」を実現しようというのだ。この考えに基づき、市民検証委員会を設立し、池内元委員長や元検証委員の専門家たちの主導で、柏崎市を皮切りに新潟県内10ヵ所でキャラバン集会を開催してきた。集会では、3つの委員会報告や県の検証総括には何が欠けているのか、何が課題かについて池内さんが提起し、市民と対話するというスタイルである。対話を通して、検証作業を豊かにし、柏崎刈羽原発の再稼働を批判的に検討していこうというものだ。
 市民検証委員会は、運動の手引き書としてこのたびパンフレットを作成した(14ページの読みやすいもので、1冊100円。希望者は社民党新潟県連へ)。池内元委員長は11月22日に自身の検証報告を出す。それも踏まえ、2巡目の県内キャラバン集会を実施し、市民検証を完成させようとしている。原発市民検証運動に注目していきたい。