(社会新報1月11日号3面より)
労働組合に関わる事がらで昨年最も私たちの耳目を集めたのは、猛暑の8月31日に決行された「そごう・西武労働組合」の61年ぶりの全一日ストライキだろう。
使用者であるそごう・西武の経営陣は、親会社であるセブン&アイが米国投資ファンドにそごう・西武を売却する方針を決めたにもかかわらず、詳しい情報を組合側に明示せず、無責任な態度をとり続けてきた。それで、組合は交渉力を高めるためにストを構えることにした。スト権確立のための組合員の批准投票結果は賛成が93・9%であった。その結果、セブン&アイのトップらも交渉に出てくるようになった。しかし彼らは、そごう・西武の社長を解任し、取締役の過半数をグループから送り込んだ。9月にも売却が完了するとの観測が広まったため、組合は早期売却阻止を目的にスト決行を決めた。
スト当日には、他の大手デパートの労働組合も連帯して駆けつけ、300人でデモ行進した。会社側が取締役会で売却決議を強行したため、スト目的は達成できなかったが、このストには圧倒的な共感が地域住民や労働者から寄せられた。
日本のスト件数は1974年の5197件をピークに80年代にはあっという間に3ケタ台に落ち、直近で33件にまで落ち込んだ。なぜ日本の労働者はストに訴えないのか。97年以降労働者の賃金はほとんど上がっていないし、昨今の物価高で実質賃金は下がり、生活は苦しくなるばかりだ。一方で企業の内部留保は2012年以来増え続け、22年末には555兆円にまで膨らんだ。労働組合はストを構え、使用者側に賃金アップを毅然(きぜん)と迫るべきではないのか。過労死や労災をなくし、ディーセントワークを実現するためにも、ストに訴えることが必要ではないのか。
日本の公務員労働者は、1948年にマッカーサーの政令201号により、不当にも団体交渉権の一部とスト権を剥奪された。52年に失効したが、国家公務員法98条と地方公務員法37条に引き継がれ、いまだに公務員労働者には労働基本権の肝であるスト権が保障されていない。
この異常事態が、労働者がストに訴えないことに大きな影響を与えているのではないか。闘う武器を75年間も奪われている労働者、闘う武器を30数年間放棄し続ける労働者が圧倒的多数の日本。まさに企業側にとっては天国であろう。