社会新報

【主張】辺野古訴訟で最高裁不当判決~政府は沖縄県民の民意と向き合え

(社会新報9月20日号3面より)

 

 政府は沖縄県民の民意と向き合え9月4日、政府が在沖縄米軍普天間飛行場の代替基地を予定している名護市辺野古の軟弱地盤の改良工事に関する訴訟で、最高裁が沖縄県の上告を棄却した。
 辺野古の埋め立て予定地で、「マヨネーズ並み」ともいわれる軟弱な地盤が見つかり、2020年に沖縄防衛局が設計の変更を県に申請した。これに対して県は「環境破壊が甚大」などとして不承認としたが、国土交通大臣が行政不服審査法に基づく審査を請求して22年に処分の取り消しを採決。県に「是正」を指示したのである。この取り消しを求めた県の訴えが今回の判決で否定された。最高裁は、設計変更の承認は県が国に代わって執行する「法定受託事務」だとして、知事の処分を国が取り消した以上、知事は裁決に従う義務を負うとした。
 今回の訴訟は、政府の組織である沖縄防衛局が「私人」の立場で不服を申し立て、国交相が県の処分を取り消したもの。法律家からは法の趣旨に反する「国による私人なりすまし」だという批判もされている。大浦湾の豊かな自然を破壊するという環境面での疑問も残る。工事予定地には絶滅危惧種を含む多様な生物が生息し、安易な埋め立てが許されないのは当然だ。判決はこうした事情を考慮することなく、県の主張にも耳を貸さず、ただただ形式論で「県敗訴」に導いた。沖縄県と国は2015年以降13件の裁判を闘い、11件が終結しているが、和解・取り下げの4件を除き7件は一貫して国の勝訴である。残る2件も、これまでの経緯を踏まえれば県が勝てる可能性は高くない。

 強大な権限を持つ行政の行き過ぎに歯止めをかけるのが、三権分立における司法の役割であることを踏まえれば、この判決は司法の存在意義を揺るがすものと言わざるを得ない。まさに不当判決であり、怒りを禁じ得ない。

 憲法は「地方自治」に1章を割き、地方分権改革は国と地方自治体は「対等」な関係に位置付けたはずだ。埋め立てをめぐる知事の判断を国交省が取り消したのは、翁長雄志前知事の時代も含めて3度目。国の一方的な判断を司法も一体となって自治体に押しつけるならば、地方自治は成り立たなくなる。今回の判決を盾に、政府が工事を強行しようとすることはあってはならない。国は辺野古新基地を唯一の解決策とするかたくなな姿勢を改め、県との対話の中から代替策を探る努力をするべきだ。