(社会新報4月12日号3面より)
学問の自由と独立を軽んじるアベ政治は、現岸田政権でも踏襲されている。
菅政権は日本学術会議の推薦候補者6人を承認しないまま放置したが、岸田政権は日本学術会議法改正で政府の介入を正当化しようとしている。学術研究に介入し武器開発に利用するという目的意識に基づくものであろう。
学問の自由と独立を守るために、日本学術会議法改悪を許してはならない。
同様の文脈にあるのが、東電柏崎刈羽原発の再稼働を判断するために新潟県が独自に行なってきた「三つの検証」の取りまとめ役の「検証総括委員会」委員長に対する県知事の仕打ちである。「福島第一原発の事故原因」、「原発事故が健康と生活に及ぼす影響」、「万一原発事故が起こった場合の安全な避難方法」の3つの検証がこの間、各委員会で進められ、それぞれ報告書が上がってきている。しかしながら、総括委員会だけは設立された2018年2月と21年1月の2回しか開かれておらず、その後の2年間、これまで1度も開かれていない。
その理由は、検証総括委員会・池内了委員長の委員会運営に対して花角県知事が口を出し、徹底して妨害してきたからである。池内委員長は、総括委員会の検証と県民への説明のあり方について、①柏崎刈羽原発に何ら言及しない検証総括はあり得ない②東京電力の適格性評価の議論を避けるべきでない③互いに補完的な議論が必要な部分や専門外の問題に関して大所高所から議論するべき④県民が何らかの形で議論に参加することが必要だ と表明してきた。
ところが県知事は、この池内委員長の考えを全面否定した。委員長は、そうであれば自身と県のどちらの進め方がいいか委員の意見を聞こうとまで提案した。だが県知事はこれも聞き入れなかった。
新潟日報の報道によれば、県側は3月31日の委員の任期切れを前にした28日に池内委員長宅まで行ったということだ。だが委員長の考えの受け入れを表明するために行ったわけではないから、当然、話し合いは決裂した。3・11以後に科学の倫理をあらためて問い直そうとしている著名な宇宙物理学者・池内さんへの県知事の仕打ちは非礼極まりないものであり、科学や学問に対するいささかの敬意も感じられない。このような県知事に柏崎刈羽原発の再稼働の判断を委ねることなど、到底できない。
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