(社会新報12月21日号3面)
臨時国会が12月10日、69日間の会期を終え閉会した。旧統一教会との癒着や「政治とカネ」で合わせて3人の閣僚が更迭される異例の展開となったが、岸田政権の限界を見せつけた国会だった。
昨年10月に誕生した岸田政権は「新しい資本主義」を掲げた。自民党内ではハト派といわれる宏池会の出身ということもあって安倍、菅と続いた弱肉強食の新自由主義丸出しの政権よりはまともな方向に転換されるのではないかという期待も一部にはあった。
もともと具体性に乏しい「新しい資本主義」の主張ではあったが、次第にトーンダウンした。
さらに臨時国会召集直前に安倍晋三元首相の国葬を国論が完全に二分しているにもかかわらず強行したことも支持率を急落させる大きな原因となった。
福島みずほ社民党党首は「統一教会問題をとことん解決するか、総辞職するしかない」と10月12日の会見で述べた。不十分さはあるが、被害者救済法は何とか成立した。だが、自民党との癒着の徹底解明に岸田政権は及び腰だ。
一方、コロナ禍と物価高に苦しむ庶民の実態をよそに、岸田政権は大軍拡路線に突き進んだ。向こう5年間で敵基地攻撃能力の保有を含め総額43兆円にも上る防衛費を計上しようとしている。これもきっかけは20年9月に安倍元首相が退任する際の「抑止力強化のために敵基地攻撃能力の保有」を求めた談話だ。
軍事ジャーナリストの半田滋さんは、「『敵基地攻撃』は自民党の悲願であり、ロシアのウクライナ侵攻とは無関係」と分析する(12月7日の党政策審議会主催の学習会で)。自民党は13年以降、「敵基地攻撃能力の保有」を防衛計画大綱への提言で触れているからだ。
マスコミは大軍拡の財源をめぐる閣僚や自民党の論争を面白おかしく取り上げているが、報道の仕方がおかしいのではないか。大軍拡について国会で全く議論されていないし、その内容についてさえ明らかではない。そもそも政府の言う、軍事的な抑止力を高めれば安全になるという主張は正しいのか。前出の半田さんは、「平和と安定は、外交を通じた信頼醸成でこそ成り立つ。日本は韓国、ASEAN諸国といった域内国や英国など欧州の域外国と連携し、米中に戦争回避を訴え続けなければならない」と述べた。来年は憲法改悪と大軍拡を阻止する正念場の年になろうとしている。