社会新報

【主張】2023年のGDP~日本は独に抜かれ4位、幸福度47位

(社会新報2月29日号)

 

 内閣府が発表した2023年の日本の名目国内総生産(GDP)がドイツに抜かれ、世界4位に下落したことが話題だ。額は過去最高の591兆円だったが、ドル換算で4兆2106億㌦となり、3位の座をドイツに渡すことになった。
 日本は1968年に当時の西ドイツを抜いて、米国に次ぐ世界2位の経済大国となったが、2010年に中国に抜かれ、今回ドイツにも逆転された。数年以内に、現在5位のインドに抜かれる可能性も指摘されている。
 人口が日本の11倍もある中国とは違い、ドイツの人口は日本の3分の2程度。インフレや為替の変化が背景にあるとはいえ、GDPがドイツを下回ったことは、日本の国力の低下を実感させる。そもそもこれ以前に日本の「1人当たりGDP」は2000年(2位)をピークに下がり始めており、22年には3万3854㌦と世界32位に落ちていた。これは人口10万人の南米の島国アルパの1つ上で、G7では最下位だ。「ジャパン・アズ・ナンバーワン」などと浮かれていたバブル時代からはすでに遠かったのである。
 日本の名目GDPが縮小しているのは円安の進行に加えて、物価高の長期化によってGDPの5割を占める個人消費が低迷し、雇用の7割を占める中小企業の賃金が上がらないなど、実体経済の弱さがあった。毎月勤労統計による23年の実質賃金は前年から2・5%減。賃金上昇が物価上昇に追いつかない。
 一方で日経平均株価はバブル期の史上最高値に迫る。輸出企業は好決算が相次ぎ、新築マンションの平均価格は1億円の大台を超えた。いびつな経済構造にメスを入れ、格差拡大への対策を進め、物価高に苦しむ国民の暮らしを立て直さない限り、経済再生などおぼつかないのである。
 そこで暮らす人々が幸福であれば、経済活動の規模を計る指標の一つにすぎないGDPの額や順位に一喜一憂する必要はない。しかし例えば国連機関が発表する「世界の幸福度ランキング」で日本人の満足度は47位、G7最下位だ。この調査のトップはフィンランド、上位には北欧の国々が目立つ。ドイツは16位だ。いたずらに経済成長を求めるのではなく、資本主義を上手にコントロールし、市民の「くらし」を保障する社会民主主義的な政策が、幸福度の高い社会をもたらしているのではないか。党大会でも議論を重ねたい。