社会新報

【主張】海自と川重の癒着~巨額防衛利権の病巣を徹底解明せよ

(社会新報7月18日号)

 

 岸田内閣は2022年末の安保3文書改定で、防衛関連予算をGDP比1%から2%へ倍増する、軍拡路線を強行した。三菱重工業を中心とする防衛産業大手は巨額の防衛予算増で活況を呈す。こうした状況に風穴を開けるかのように、海上自衛隊の潜水艦の検査・修理をめぐり、防衛省と業界の「腐敗と癒着」構造が明るみになった。
 裏金疑惑は大阪国税局の税務調査で発覚した。潜水艦建造メーカーの川崎重工業(川重)の神戸工場での潜水艦の点検・修理業務に絡み、取引先の6社を介し、資材発注などを装った架空の発注で支払った代金を取引先企業側にプールさせる方法で裏金をつくり、その額が年間1億数千万円に上ることが明らかになった。この裏金を使って、海上自衛隊の潜水艦乗組員らに家庭用ゲーム機などの物品や金券、飲食接待を提供していた疑いがもたれる。川重は2023年3月期までの6年間で、大阪国税局から十数億円の申告漏れを指摘され、重加算税を含む追徴税額は6億円に上るとされる。
 潜水艦は就役後、毎年の年次検査や3年に1度の定期検査を受ける。乗組員が立ち会いのため神戸市の川重の宿泊施設に滞在する間に、利益供与があったとされる。乗組員側が希望する物品を川重側に伝えていた。検査の発注額は年間百数十億円で、川重の裏金づくりは約20年前から続いている疑いがある。
 川重から通報を受けた防衛省は今年4月、海自に調査委員会を設置し、自衛隊員倫理法違反の疑いで調べを始めた。さらに木原稔防衛相は7月5日、特別防衛監察の実施を指示した。
 川重と言えば、近年思い出される事件がある。2012年に発覚した陸上自衛隊の次期多用途ヘリコプター「UH―X」開発をめぐる官製談合事件だ。富士重工業を「UH―X」開発事業の企画競争入札から排除するため、防衛省と川重、三菱重工業の3者が談合を繰り返した。東京地検は同省職員を略式起訴。川重はその反省を忘れたのか。
 今回の裏金疑惑は、防衛省と業界の「腐敗と癒着」の氷山の一角にすぎない。

 社民党は、特別監察や国税局の調査に委ねるのではなく、地検特捜部が国税局と合同捜査本部を立ち上げ、巨額の防衛利権に群がる病巣を徹底解明するよう訴える。そして集団的自衛権行使容認と安保3文書改定を撤回し、防衛予算の大幅な削減を求める。