(社会新報10月11日号3面より)
戦後日本の4大公害病の一つである水俣病が公式確認から67年を経た現在も終わっていない。
水俣病の未認定患者救済のため2009年に施行された水俣病特別措置法(特措法)に基づく救済策の線引きから外れた128人が、国や熊本県、チッソに対して計5億7600万円の損害賠償を求めた「ノーモア・ミナマタ近畿第2次訴訟」の判決が9月27日、大阪地裁であった。
達野ゆき裁判長は、原告全員を水俣病と認定し、国などに計3億5200万円(1人当たり275万円)の賠償を命じた。
近畿訴訟の原告は、14年9月以降に提訴した大阪など13府県に住む51~87歳の128人。手足のしびれなどがあり、1人当たり450万円の賠償を求めていた。
判決は、被告らの不法行為から20年以上が経つと損害賠償請求ができなくなる「除斥期間」の主張を退け、「除斥期間」の起算点を、共通診断書検診に基づいて水俣病と診断された時とした。
判決は、特措法の対象外地域の原告や年代外の原告、特措法未申請原告の全員を水俣病と認定した。原告全員が水俣病を発症し得る程度にメチル水銀を摂取したと推認できると指摘し、原告の症状は水俣病以外に説明ができないと判断した。
原告弁護団は判決の同日に声明を発表し、「全面勝訴」と評価した上で、「高齢化する原告らの早期救済に向けて直ちに解決協議に応じるよう強く求める」と訴えた。声明は「この判決は被告らの患者切り捨てを厳しく断罪したものであり、全国で闘われているノーモア・ミナマタ第2次訴訟の先陣を切る判決として、未救済原告を励まし、全ての水俣病被害者の救済に向けて大きな一歩を踏み出すものである」とした。
大阪の他、新潟、東京、熊本の各地裁で約1760人の集団訴訟も争われているが、今回の判決は全国で初めてのもの。厳格すぎるとの批判がある国の認定基準や、居住地域や年齢で救済対象を限定した特措法に強い疑問符を投げかけるものとなった。
特措法の3条では「救済を受けるべき人々が、あたう限り(できる限り)すべて救済されること」を目的にうたう。政府はこの「あたう限り」の条文を肝に銘じ、特措法の線引きを改め全面救済へかじを切るべきだ。
4日の会見で福島みずほ党首は、「水俣病が公式確認されたのは、1956年だ。それから67年も経って、まだ解決していない。国は控訴するべきではない。2009年の救済法の不備を見直し、水俣病被害者の根本的な救済を」と強く訴えた。社民党は未認定患者の全面救済に向け院内外の闘いで全力を尽くす覚悟だ。