安保法制の強行成立は、政治権力が憲法によって実質的に縛られる立憲主義を空文化し、日本の民主主義に重大な汚点を残した。
2015年9月19日、第2次安倍晋三政権が、世論を無視し、明白な憲法違反である集団的自衛権行使を容認する安保法制=戦争法を強行成立させてから10年の歳月が過ぎた。
集団的自衛権とは、自国が直接攻撃を受けていないのに、密接な関係にある他国(米国)が第三国から攻撃された場合に「日本の存立が脅かされる事態」(存立危機事態)と判断すれば、米軍支援のため、自衛隊が参戦できるという内容だ。
しかし、存立危機事態の政府判断が極めて恣意(しい)的に行なわれる恐れがある。政府は日本の原油輸入の海路である中東ホルムズ海峡の封鎖を例に挙げて自衛隊の出動に言及したが、後にその例を取り下げた。それほど存立危機事態判断の要件はあいまいだ。国会承認が必要だが、事実上の事後承諾で、内閣の恣意的判断にゆだねられる。
従来の日本の防衛政策は専守防衛が原則であり、憲法9条の下では、日本が攻撃された場合のみに自国を守る個別的自衛権のみが認められるとの立場だ。
政府は集団的自衛権の行使には憲法改正が必要としてきたが、第2次安倍政権は内閣法制局長官を交代させ、強引な憲法解釈の変更によって「戦争国家づくり」へ暴走してしまった。
衆院憲法審査会(15年6月4日)で与党が推薦した長谷部恭男・早稲田大教授は、安保法制について「憲法違反だ。従来の政府見解の基本的な論理の枠内では説明がつかない」と明言した。当時の大多数の憲法学者や歴代内閣法制局長官が「違憲」と断じた。
そして、岸田文雄内閣が22年12月16日に閣議決定を強行した「国家安全保障戦略」など安保3文書では、憲法違反である敵基地攻撃能力の保有を可能とし、5年間で防衛費43兆円の大軍拡にかじを切った。
現在、米国の戦争に参戦する準備が九州、沖縄南西諸島で着々と進む。敵基地攻撃能力保有の具体化として、防衛省は8月29日、北京市にも届く長距離ミサイルの配備を25年度内に熊本市に配備すると発表した。
憲法9条を持つ日本が歩むべき進路は、敵基地攻撃の準備ではなく、緊張緩和の対話であり、外交努力だ。その努力が弱すぎる。社民党は集団的自衛権行使を容認した安保法制を廃止するために全力で闘う。(10月2日号)