結婚に伴う改姓による不利益を解決するには、選択的夫婦別姓制度の導入が必要だ。
「旧姓の通称使用の法制化」では根本的な解決策にはならない。通称使用の法制化は、夫婦同姓となる「同一戸籍同一氏」の原則は維持した上で、旧姓に法的効力を与えるというものにすぎない。慣れ親しんできた姓が変わることでアイデンティティー喪失に不安を抱く人たちや、生活上の不利益を感じている人たちなどにとって、納得できるものではない。
高市首相は9日の衆院予算委で、結婚前の旧姓を通称として使用できる法案の成立を来年の通常国会で目指す方針を表明した。自民党と日本維新の会の連立政権合意にも法制化が盛り込まれている。
首相はもともと、選択的夫婦別姓制度の導入に反対し、首相就任前にも通称使用の法律私案も公表していた。維新も先の通常国会で、同様の法案を提出している。
しかし、高市私案、維新案ともに、企業などへの通称使用の環境整備を求めるにとどまり、実際に法制化した場合、さまざまな問題が想定される。現状では日本の金融機関の3割が旧姓による口座開設を認めておらず、マネーロンダリング(資金洗浄)対策として戸籍名の確認を厳格化しているが、法制化によって金融機関の混乱が予想される。また海外では旧姓使用はトラブルが多い。パスポートにカッコ書きで旧姓を併記できるようになったが、読み取り用ICチップは国際機関仕様に準拠しており、戸籍名しか記録できない。
選択的夫婦別姓制度をめぐっては、1996年に法制審議会が導入を答申してから30年になろうとしている。世界で法的に同姓を義務づけている国は日本だけだ。国連の女性差別撤廃委員会から何度も改正の勧告を受けている。男女共同参画会議の答申案に、内閣府が首相に忖度(そんたく)して独断で旧姓の通称使用法制化の文言を加えたことが判明し、12日の首相への答申案提出が見送られた。
社民党の福島みずほ党首は10日の会見で「旧姓の通称使用の法制化はまさに選択的夫婦別姓つぶしだ」と喝破した。
野党が共同提出した選択的夫婦別姓法案が先の通常国会で28年ぶりに審議入りするなど、機運は高まっていた。自民内にも賛成派がいる。政府は一刻も早く選択的夫婦別姓の実現へ方針を切り替えるべきだ。(12月25日号より)