2月28日、米国とイスラエルが、イランに大規模な軍事攻撃を開始した。先制攻撃で最高指導者アリー・ハメネイ師はじめ革命防衛隊司令官や国防相など政府・軍の高官40人以上が殺害された。
すでに800人近くの民間人の犠牲者も報道されている。同国内約2000ヵ所の軍施設も攻撃されるなど、軍関係者にも多数の死傷者が出ている模様だ。イラン側も米国やイスラエルが拠点を置く湾岸諸国への反撃を開始しており、中東諸国全体を巻き込む紛争になりかねない状況である。
確かに、イランには核開発疑惑や最近の反体制デモへの武力弾圧など、批判されるべき点があったが、だからといって他国がいきなり軍事攻撃をして、その首脳部を一斉に殺害するようなことが許されるはずはない。
しかも米国とイランは2月に核開発をめぐる交渉を再開し、3月2日にも実務者協議が予定されていた。仲介役のオマーンのバドル外相が「真剣な交渉が台無しにされた」と憤ったのは当然だ。外交交渉に応じるように見せかけて油断させ、武力で屈服を迫った。米・イスラエルの行動は国連の決議も経ておらず、国際法違反の蛮行だ。米国内法(憲法や戦争権限法など)にも反する可能性が高い。
かつて「国家の正当な権利」とされていた「戦争」を制約することは、人類の共通の願いであった。1928年の不戦条約、国連憲章、大量破壊兵器の制限・禁止、国際人道法など、多くの犠牲の上に人類の英知をかけて積み上げてきた「武力行使禁止」原則を、大国が先頭に立って踏みにじっている。核兵器が拡散する中で、「戦争」の拡大は今や人類の存亡にも直結することを肝に銘じなくてはならない。
2024年の大統領選で「戦争を終わらせる」と訴えたドナルド・トランプ米大統領は、再就任から1年余りでソマリア、イラク、イエメン、イラン、シリア、ナイジェリア、ベネズエラの7国を攻撃し、世界に戦火を広げた。誰もがトランプ氏の逆鱗(げきりん)に触れることを恐れて黙り込んでいるかのようだが、平和国家を自認する日本こそが、「力による現状変更」が許されないことをはっきりと主張するべきだ。
すでにホルムズ海峡は事実上封鎖に近い状況のようであり、日本経済への打撃も計り知れない。遠い中東の戦火としてやり過ごすことはできない。