社会新報

【スパイ防止法を考える勉強会】 暗黒の監視社会を招く ~ ジャーナリストの青木理さんと海渡雄一弁護士が語る

青木理さん(左)と海渡雄一弁護士。

 

「治安維持法の再来」とも称される危険な「スパイ防止法」の法制化に高市政権と同調する右派政党が前のめりだ。高市内閣発足翌日の10月22日、衆院第一議員会館で「スパイ防止法を考える市民と超党派の議員の勉強会」が行なわれた。社民党からは福島みずほ党首、ラサール石井副党首が参加した。
スパイ防止法は、単にスパイ活動を防ぐだけではなく、むしろ国民の自由や言論を抑圧し、監視社会を招く恐れがある。勉強会で海渡雄一弁護士は、スパイ防止法の本質を「戦争を前提に世界を敵と味方に分ける危険な法律」と評した。「戦争する国ではないはずの日本が、世界を敵と味方に分けるような法律を作ってよいのかというのが、一番根底にある問いだ」。海渡弁護士はまた、「この秋の臨時国会に提出される可能性がある」として警戒する。

国民民主党が急先鋒

スパイ防止法に非常に前のめりなのが国民民主党だ。
「G7諸国と同等レベルのスパイ防止法を制定するとハッキリ言っており、外国勢力活動透明化法案など3法案を出すとアピールしている。自民党と日本維新の会の連立政権に売り込むだろう」
維新についても「米国のCIAのようなインテリジェンス機関をつくる、経済安保法を強化してどんどん罰則を適用する、土地規制法をさらに強化して実際に土地の取引自体を規制するとも言っている」と批判。
スパイ防止法の危うさを隠そうともしないのが参政党だ。海渡弁護士は「神谷代表は今年7月の街頭演説で、公務員を対象に『極端な思想の人にはやめてもらわないといけない。それがスパイ防止法だ』と言っている」と指摘する。
実際にスパイ防止法が導入されたらどうなるのか。海渡弁護士は「最近起きたえん罪事件である大川原化工機事件では、警察が証拠資料をねつ造していたが、秘密法が強化されたら、こうしたえん罪の弁護活動ができなくなる可能性がある」と懸念。また、スパイ関連の法制を統合した「国家安全保障法」が施行された英国の事例を紹介した。
「英国議会の調査員2人が中国のためにスパイ行為をしたとして起訴されたが、後に起訴は取り下げられた。事件の経緯をめぐって、大きな論争が起きている」
海渡弁護士は「イラク戦争もCIAが拷問によって引き出した情報をもとに始められた」と指摘。「情報機関が日本発の戦争を引き起こすことになるかもしれない」と警鐘を鳴らした。

後藤田正晴の警告「情報機関は諸刃の剣」

ジャーナリストの青木理さんも発言し、「政治の劣化、特に保守を名乗る人たちの劣化がここまで来たのか」と憂いた。「元内務官僚で、保守の政治家であった後藤田正晴氏は、晩年の新聞のインタビューで、なぜ日本には情報機関がないのかと聞かれ、『謀略はすべきではない』『情報機関は諸刃の剣となる』と答えていた。それに比べ、今の治安維持法的な法の必要性や情報機関の創設を無邪気に礼賛し、必要だとする風潮は危険」と危機感を募らせた。
勉強会の司会も務めていた福島党首は、「スパイ防止法の先は戦争しかないと思っているので、反対の声を大きく広げて、まずは国会に法案を出させないことで、一緒に頑張っていこう」と呼びかけた。
社民党のラサール石井副党首は「政府にたてつく者は皆スパイだという怖い時代になる前に止めないといけない」「国家が国民を監視するのは憲法に反している」と述べた。
社民党のほか、立憲民主党の近藤昭一代表代行(衆院議員)、共産党から小池晃書記局長(参議院議員)、れいわ新選組から上村英明衆院議員などの国会議員が参加した。