(社会新報6月7日号1面より)
共同テーブルが主催するシンポジウム「統一教会と自民党が呼び込む戦争」が5月23日、衆院第一議員会館で行なわれた。会場は約300人で満席となり、ライブ配信には約1000人が参加した。
昨年7月に安倍晋三元首相が射殺されて以降、旧統一教会に関わる問題が一気にクローズアップされた。
だが今年に入り、徐々に関連報道は少なくなり、問題がうやむやにされそうな気配だ。そこで、今回のシンポ開催となった。
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第1部では、フォークシンガーの中川五郎さんがギターを手に現われ、政治・社会風刺の歌を4曲披露した。自民党の元幹事長の石原伸晃衆院議員(当時)が新型コロナに感染してすぐに入院できたことを取り上げた曲を歌うと、会場内の参加者に大受けした。
続いて、講談師の神田香織さんが「はだしのゲン」の講談を披露し、原爆投下後の広島の惨状を伝えた。
日米への政界工作
第2部では、ジャーナリストの有田芳生さん、元参院議員の平野貞夫さん、元文部科学事務次官の前川喜平さんが参加して、統一教会問題に関するシンポジウムが行なわれた。評論家の佐高信さんがコーディネーターを務めた。
この問題の取材を続ける前参院議員の有田さんは、「メディアでも国会でも昨年の夏以降、統一教会と自民党の関係、霊感商法や献金問題、2世・3世問題などが取り上げられている。それぞれ大事な問題だが、本質的な問題にはほとんど触れていない」と苦言を呈した。
その上で、1978年に米国下院のフレーザー委員会が発表した統一教会に関する調査報告書を紹介し、次のように語った。
「70年代、韓国の朴正煕軍事独裁政権はKCIA(韓国中央情報部)と共に統一教会を使い、米国内で『接待と女性派遣』を含む政界工作を始めた。統一教会は(表向きは)宗教の顔をしているが、(内実は)多くの多国籍企業を持ち、政治とも係わり、準軍事組織的なものも持っている」
「安倍政治」で安泰
統一教会が97年に日本の文化庁に名称変更を申し出た際の宗務課長だった前川さんは、次のように語った。
「私は当時、統一教会の申し出を受け、『それはできない』と返答した。だが、安倍政権で下村博文さんが文科大臣だった2015年、名称変更の認証がなされた。下村さんは『知らなかった』と言うが、明らかに大臣の指示で行なわれたことだ」
解散命令の可能性についても、次のように語った。
「10年くらい前から解散命令をできる状態になっていたと思う。だが、第2次(以降の)安倍政権下の文科大臣は、1人を除いて全て安倍派だ。安倍さんの『お友達』や『子分』ばかりが大臣だったので、統一教会は安心していられた」
近い将来はどうか。
「岸田首相の『まず質問権の行使を』との方針の下、文科省は統一教会にこれまで5回も質問権の行使をしている。だが、これをやったところで、解散命令につながる情報を得られるはずがない。国民の意識からこの問題が薄れていくのを待っているのだろうか」
シンパ議員の復活
平野さんは、先日の統一自治体選で統一教会と直接関係のあった候補者の多くが当選しているとして、「統一教会という組織が勝利した典型だと思う。さらに最近、統一教会は維新とのつながりを強化しているようだ」と語った。
有田さんはこの関連で、統一教会の現役信者から得た情報を元に「昨年の参院選で、統一教会は特に当選が危ない候補者と政策協定合意書を交わし、全力で選挙を支えた。合意書を交わした候補者には自民が多かったが、維新と国民民主もいたという」と語った。
前川さんは「先日の統一自治体選の結果を見ても、統一教会と関係のあった地方(自治体の)政治家が続々と当選している。次の総選挙でも、同じようなことが起きかねない」と懸念を表明した。
平野さんはこうした現状を踏まえ、統一教会に対抗する「市民統一戦線のようなもの」をつくる必要性を訴え、「そうした運動を大きくしていくことが、憲法9条を守ることのポイントだと思う」と力説した。
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ことば【統一教会】韓国で1954年に文鮮明によって創設された宗教団体。欧米では「カルト宗教」と見なされている。日本では2015年、世界平和統一家庭連合に名称変更された。
1960年代以降、日本でも急速に活動を強め、岸信介元首相ら自民党政治家との関係を深めた。
80年代以降、霊感商法や献金強要問題の他、関連の国際勝共連合による極右的活動も社会問題化した。
その後、岸の孫である安倍晋三らとも密接な関係を築き、自民党内での影響力を盤石にした。
教育面では「純潔教育」や「親に従順な子ども育成」に力を入れている。
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