(社会新報2022年3月16日号3面より)
ロシアによるウクライナ侵攻は、ますます深刻さを増している。日本で暮らす1900人弱のウクライナ人の人々は何を思うのか。都内で行なわれた反戦デモで、在日ウクライナ人の人々の話を聞いた。
在日ウクライナ人を中心に、日本人やその他の外国人らによる反戦集会が、相次いで行なわれている。先月26日にはJR渋谷駅ハチ公前で集会が行なわれ、主催者発表で約2000人が集まった。日本での滞在は十数年というウクライナ人女性が、流ちょうな日本語で「これは、ウクライナだけに対する攻撃ではなく、民主主義に対する攻撃です」と訴える。彼女は激戦が続くウクライナ東部の出身。「ロシア軍はめちゃくちゃです。一般市民の住宅も、保育園も攻撃されました。両親はまだキーウ(キエフ)にいて、爆撃におびえながらシェルターに避難しています。心配でたまりません」と嘆いた。
集会には小さな子どもたちも参加。日本語で「一日でも早く平和を」と書かれたプラカードを手に声を張り上げて、戦争反対を訴えていた。
UNHCRなどの募金を
今月5日には渋谷でデモ行進が行なわれ、約3000人が「STOPプーチン」「戦争を止めろ」など書かれたプラカードを手に、表参道や渋谷駅前などを行進した。ウクライナの伝統的な花冠をかぶった女性は「日本の皆さんの支持に感謝しています」「もしできたらウクライナの人々への緊急支援への寄付をお願いします」と訴える。「あちこちの街で物資が不足していて食料すら十分にありません。どうか助けて下さい」。ウクライナへの支援としては、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)や赤十字社などが募金を呼びかけている。
デモに集まった人々は皆が早期の停戦を求めている一方、日本の報道番組での一部のコメンテーターたちが言うような、早期停戦のためには「非武装」「中立化」というプーチン大統領の要求をウクライナ側が飲むしかないのではとの主張とは異なる。デモのスタッフだという男性は「仮に要求を飲んだとして、何が起きるでしょう? ロシアに占領されるだけです」と顔をしかめる。「そうなれば自由は奪われ、人権侵害が横行するでしょう。そんなことはごめんです」。日本で学生をしているという女性も「戦争は早く終わってほしい。でも、占領はもっと嫌。ウクライナ人は、決して諦めません。ロシア軍こそ早く撤退するべきです」と語る。
露の原油買わないで
戦争を終わらせるため、日本にできることは何か。「ロシアのガスを買わないで」と書かれたプラカードを持つ女性は「ロシアにとって最大の輸出品は天然ガスと原油。日本もロシアから天然ガスを買わないようにしてほしいです」と話す。女性の言うとおり、ロシアの政府歳入の約5割を原油・ガス関連収入が占め、ロシアの天然ガスの輸出先のうち、日本は1割弱を占めている。中国やドイツには及ばないが、ロシアの「お得意さま」の一国だ。ロシアからの天然ガスの輸入をやめれば、ロシアの軍事費に日本のお金が使われることもなくなる。日本国憲法の理念からは、ウクライナ軍に防弾チョッキを送ることよりも、再生可能エネルギー推進と省エネ化を一層推進していくべきなのだろう。それは、平和のためにもエネルギー安全保障のためにも好ましいし、温室効果ガスの排出を実質ゼロにする脱炭素社会の実現のためにも重要なのだ。
↑「STOP PUTIN」などのプラカードを掲げてデモ行進する在日ウクライナ人や日本の市民ら(5日、渋谷区内)。
↑青と黄の2色旗である大きなウクライナ国旗を持って行進する在日ウクライナ人や日本の市民ら(同)。
社会新報ご購読のお申し込みはこちら