(社会新報2021年6月9日号3面《主張》より)
この1年余り、世界中が新型コロナウイルスとの闘いに明け暮れた。感染拡大防止に一定の成果を上げた国がある一方で、日本はPCR検査にせよワクチン接種にせよ、「先進国」で最低ランクの実績にとどまってきた。その反省を踏まえ、感染拡大阻止に全力を挙げることこそ、現下の政治が果たさなければならない最大の任務のはずだ。
ところが、日本政府や与党はそうは考えなかった。
自民党の下村博文政調会長は憲法改「正」を意識しながら、「コロナのピンチを逆にチャンスに」と発言した。
それを裏づけるように、通常国会後半では、コロナ禍に苦しむ国民をよそに、平和や人権、民主主義の観点から重大な疑義のある法案が次々と審議され、政府・与党が成立を狙った。
その危険性については本紙でも繰り返し指摘してきた。幸いなことに入管法改定案は反対世論の盛り上がりによって事実上の廃案に追い込むことができたが、国民投票法改正案や重要土地調査規制法案など、改憲への呼び水となりかねない法案の成立が狙われている。
これらの法案の内容は憲法破壊そのものであり、政権側はこうした動きをテコに、明文改憲に向けた動きを本格化させると思われる。
「護憲平和」「改憲阻止」を一丁目一番地とする社民党にとって文字どおり正念場である。党中央にはすでに「憲法改悪阻止闘争本部」があり、これまで連続講座の開催や冊子の発行などを手がけてきたが、憲法改悪を許さない運動を全国津々浦々に広げていくことが情勢からも求められている。
私たちが連携する運動体として、中央には平和フォーラムや戦争をさせない1000人委員会、地方には平和センターや1000人委員会などが存在する。これ以外にも個人参加で「九条の会」などの市民グループに関わる党員や支持者も少なくない。
しかし、コロナの感染拡大により、集会などの開催がめっきり減り、参加者数の目標も限定したものになっている。苦慮した上での判断だが、結果として働く人々の改憲問題への関心が薄れていないかが心配される。
「改憲阻止」が現実のスローガンになろうとしている今、私たちが関わりを持つ地域や平和運動組織の現状をつかみ、反撃の一歩を踏み出すことが求められている。
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