声明・談話

すべてのアスベスト被害者救済へ

社会民主党幹事長

服部良一

 

  1. 建設現場でアスベスト(石綿)を吸い込み中皮腫や肺がんなどを発症した元建設作業員と遺族が、国と建材メーカーに損害賠償を求めた訴訟(神奈川・東京・京都・大阪の各1陣訴訟・原告数504人)について、5月17日、最高裁判所(第一小法廷・深山卓也裁判長)は、国と建材メーカーの賠償責任を認める初の判決を示した。国に対しては長期にわたり規制を怠ってきた責任を断罪し、被害原因となった建材を製造した可能性が高い複数のメーカーについても責任を認めた。また、労働者だけではなく「一人親方」と呼ばれる個人事業主について国の責任を認めた点は高く評価できる。現在進行中の他の訴訟にも道筋をつける画期的な判決といえる。しかし、屋外作業者に対する国の責任を否定したことや責任期間で救済に線引きしたことは極めて不当と言わざるを得ない。京都・大阪の1陣訴訟で、原判決が屋外作業者に対する建材メーカーの責任認めた結論を覆し、クボタ、ケイミュー、積水化学工業の責任を否定したことも極めて不当である。

  2. 建設アスベスト訴訟は、2008年5月16日に東京地裁に提訴されてから13年が経過している。全国各地で集団訴訟が広がり、原告(被災者)の総数は900名を超えているが、すでにその7割を超える方が亡くなられている。これ以上、解決の先延ばしは許されない。昨年12月、最高裁の上告受理が決定された際、田村憲久厚生労働大臣は被災者救済の場を設ける考えを示した。国は最高裁判決を真摯に受け止めて、全国の建設アスベスト訴訟を速やかに和解によって解決し救済を図るべきである。同時に建材メーカーも責任を認め、早期解決のためにそのテーブルに就くべきである。救済は、訴訟に参加していない被害者に対しても国の認定で訴訟参加者と同等に講じる必要がある。アスベスト関連疾患者による労災認定者はこれまでに約1万8千人にのぼり、建設業の従事者がその半数を占めている。建設アスベスト被害者は今後も毎年500~600人ずつ発生することが予測されている。原告らが求めている「建設アスベスト被害者補償基金」を創設することも喫緊の課題だ。

  3. 「静かな時限爆弾」と言われるようにアスベスト被害の平均潜伏期間は約40年で発症すると数年で死亡することもある。中皮腫による死者は毎年1500人前後(厚生労働省)であり、今後のどれくらい被害者が発症するかは未知数だ。アスベスト建材工場などの周辺住民の被害は労災保障が受けられず、石綿救済法による低水準の救済給付に留まっている。その解決も進めていかなかればならない。社民党は、すべてのアスベスト被害者を救済するために尽力していく。

以上