2022年2月7日
社会民主党 幹事長 服部良一
- ウクライナをめぐり、米国とロシアの対立が激化している。このまま緊張が続けば欧州での核の応酬も含めた大戦争に発展しかねない。社会民主党は米ロ両国をはじめとする関係各国・機関に対し、最後まで対話による交渉によって対立を解消するよう強く求める。同時に、日本政府には緊張の高まりや軍事衝突に加担することなく、関係各国・機関に対して対話による交渉を呼びかけるとともにその機会を積極的に設けることを求める。
- 米ロ両国は国連安保理常任理事国であり、国連憲章が定めた「武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない」(第1章第2条)という原則に従わなければならない。
- 現在米ロ両国間の交渉に進展が見られないのはロシア側がこれまで提案している要求の中心である①ロシアに対する安全の保障②ウクライナ、ジョージアの北大西洋条約機構(NATO)加盟中止の2点に関し、米国が一切考慮しないことが主な原因となっている。米国が仮にカナダとメキシコでロシアの軍事演習が始まったら米国がどのような安全保障上の懸念を有するか自明である以上、米国はロシアの懸念を無視してはならない。また、米国とNATOがこの数年間継続している、ロシアに近接する北欧や東欧諸国、黒海、バルト海周辺での大規模な軍事演習に関するロシアの懸念についても、同様である。
- ウクライナ東部のドネツク・ルガンスクで、2014年以降、ウクライナ政府軍とロシア系住民との紛争状態が続いていることが、問題の根源にある。ウクライナ政府は、15年2月に仏独首脳の斡旋による「ミンスク合意」を履行し、東部ウクライナへの自治権付与と首長選挙の実施に速やかに着手すべきである。この作業が進んでいない現状で、米・英両政府が続けているウクライナ軍への膨大な軍事支援は緊張を激化させるだけであり、中止しなければならない。
- 昨年10月、NATOがロシア代表部の外交官を追放して機能が停止している協議機関「NATO・ロシア理事会」に関しても、NATO側の責任で原状回復が図られるべきである。
- このように冷戦時代の構造、すなわち東西の中心国であった米ロ両国の対立やロシアと旧ソビエト連邦崩壊に伴い独立した国家であるウクライナとの間の対立が30年余りを経過した今日もなお戦争の火種として燻り続けている。軍事衝突には至らずとも軍事的威嚇の態度をとることがいかに持続可能な社会にとって無益有害であるかは冷戦の経験から明らかとなっている。とりわけ米ロ両国は21世紀に冷戦の過ちを繰り返さないことを最優先すべきである。