2024年3月29日
社会民主党
幹事長 服部 良一
- 3月28日、2024年度予算が参議院本会議で賛成多数により成立した。一般会計の総額が112兆5717億円で、2年連続で110兆円超えの予算となった。防衛費の大幅増額で岸田政権の軍拡路線をさらに進める一方で、過去最大の社会保障費と言いつつ、社会保険や医療や介護など社会保障のさらなる負担増の動きがあり、社民党は暮らしよりも軍拡を優先する予算に対して断固反対である。
- 本国会の予算審議は、政治資金パーティーをめぐる裏金など「自民党とカネ」の問題や、盛山文部科学大臣と旧統一教会との関係問題などに多くの時間を割かざるを得ず、審議が十分に尽くしきれていない。その「自民党とカネ」の問題についても、予算委員会での岸田首相の答弁は不十分であり、衆参で3回政倫審を開催したが、出席者は事実解明につながる誠実な説明など無く茶番に終わった。
- 成立した2024年度予算について、最大の特徴は前年度から1兆1千億円以上増加した7兆9468億円の防衛予算である。一昨年12月、岸田政権は5年間で防衛費を43兆円とする「安保3文書」改定を閣議決定した。この大軍拡路線により、防衛費は2023年度予算から大幅増額している。その内容は、ミサイルや戦闘機など武器の爆買いである。2024年度防衛予算の内、約5割を占めるのが過去に契約した武器のローンである。沖縄・南西諸島をはじめ全国で基地建設や弾薬庫の整備なども進められる。
- 岸田政権肝いりの「異次元の少子化対策」は財源をめぐり、2026年度に新設する「子育て支援金」が新たな負担増となる恐れがある。また、次年度介護報酬改定では、全体的には1.59%プラスとなったが、訪問介護等の基本報酬は引き下げとなった。今回の介護保険の改定では見送られたが、政府は介護サービス利用料の2割負担者を増やそうとしていた。2024年度予算では社会保障費が過去最大だが、医療、介護など社会保険の負担増加の動きがみられる。
- 2024年度予算の3割は新規国債発行でまかなう。日銀はマイナス金利を解除し、2024年度予算では国債の利払いが約9.7兆円となる。これは前年度より14%増加している。国債という名の借金に頼り続ける財政構造を転換しなければ、国債の返済だけでなく、利払い費の負担も将来世代へさらなる借金を膨らませるだけである。
- 予算成立を受けて、法案審議が本格化する。いまだ解明されない裏金問題、4月初めにも自民党内の処分が出されると言うが、これをもって幕引きにさせてはならない。そして政治資金パーテイや企業・団体献金の全面禁止、連座制の導入など政治家の責任の明確化など「政治資金規正法改正」議論が大きな焦点となる。改正に消極的な自民党案に対して厳しく対決していく。
機密情報を扱う民間事業者などの身辺調査(「適性評価」)を可能とする経済版秘密保護法=「経済安保保護法案」は機密の基準も曖昧で重大な人権侵害につながるものであり断固反対していく。
3月28日の参院本会議では兵器ローン契約を10年まで可能とする改正案が成立し、予算の「単年度主義」を無視し米国製武器の輸入に拍車をかけることになる。
政府は次期戦闘機の輸出を可能にする「防衛装備移転三原則」の運用指針を緩和したが、英・伊との共同開発の機関設立ために条約案も審議される。日本は平和国家から戦争する国へと大きな変貌を遂げようとしている。
「地方自治法改正案」では国が非常時に自治体に指示できることになり、団体自治を破壊するもので非常事態条項の改憲案の先取りと言える危険なものだ。
「食料・農業・農村基本法」改正では「食料安全保障」が強調され輸出を増やすとするが、食料自給率が低下し農業が成り立って行かない足元の現状をどうするのか見えてこない。農政の根本的な改革が問われており、社民党は「農林漁業プロジェクトチーム」を中心に議論と政策提言をしていく。
「子ども・子育て支援法改正案」も審議されるが財源の中味も説明がない。そもそも論で言えば「異次元の少子化対策」の中心に若者の雇用や貧困問題がすえられていないことが問題である。
民法改正では「共同親権導入」の拙速な議論には反対である。DVや虐待の恐れがある場合には共同親権を認めないとするが、法的保護の在り方が十分かなど課題は大きい。
「入管難民法改正案」では納税などを怠った外国人の永住許可取り消しを可能とするなど厳罰化への不安と批判がある。
- 社民党は「がんこに平和 くらしが一番」のもと、「軍拡反対!税金はくらしに」と訴えてきた。防衛予算は規模ありき・青天井で聖域化する一方で、物価対策、少子化対策や食糧自給率向上、非正規・貧困・賃上げ対策など最も力を入れなければならない政策の予算が少なすぎる。自民党政権では私たちの暮らしは決してよくならない。予算が成立したため、いつ解散総選挙があってもおかしくない状況だ。また、4月には3つの衆院補選が控えている。立憲野党が結束し、自民党政治を退陣させていく決意だ。
以上