2024年4月22日
社会民主党
幹事長 服部 良一
- 4月19日、食料・農業・農村基本法改正法案が衆議院本会議で賛成多数で通過した。食料・農業・農村基本法は「農政の憲法」として1999年に制定されたが、基本法制定時には想定されていなかった世界的な気候危機などによる食料安定供給を巡る諸課題に対応することを改正の理由とした。基本法制定時には食料自給率を熱量ベースで2030年に45%に引き上げることを目標としていたにもかかわらず、現在38%であり、その原因の分析・総括と根本的な引き上げ策を示すための法改正こそが求められていた。
- 改正案で「食料安全保障の確保」といいながら、そのための最有力手段である食料自給率を基本計画上の独立した目標から格下げし、安定的な輸入による食料確保に重点を置いてしまっている。食料自給率の向上なくして、食料安全保障などありえない。さらに、畜産農家もコメ農家も飼料代、肥料代等の生産コストが円安により高騰する中、生産すればするほど赤字を出さざるを得ない実態を理解していない。これでは後継者が出てくるわけがなく、日本農業の持続性を毀損している。改正案では、生産コストの上昇分を農畜産物価格に転嫁させる内容になっているが、無理な注文といわざるを得ない。
- 生産者が生産し続けることができ、後に続く人たちが希望を持てるためには、やはり、戸別所得補償制度の復活しかありえない。ヨーロッパでは、EU加盟のどの国でも直接支払制度を導入し、生産者をしっかりと支え、結果として日本をはるかに超える食料自給率を維持している。戸別所得保障制度の財源は、2024年度防衛費7.9兆円を大幅に削減し、農水予算に回せば十分確保できる。農水予算は1970年には防衛予算の約2倍であったのであるから、真に食料安全保障を考えるならば、農水予算は防衛予算を上回るようにするべきである。それこそが、憲法9条を有する平和憲法を持つ日本の農政であるべきだ。
- 社民党は、自給率向上や生産者の支援対策などの政策提言等を図る農林漁業再生プロジェクトチーム(PT)を立ち上げ、本改正案に対する党内議論を深めてきた。社民党は、農政の根本的転換による食料自給率向上等を真に実現できる政策を岸田政権へ働きかけつつ、本改正案の撤回に向け力を尽くしていく。
以上