声明・談話

【談話】高市首相の施政方針演説について

【談話】高市首相の施政方針演説について

2026年2月21日

社会民主党全国連合 服部良一

 

2月18日に召集された第221特別国会冒頭での首班指名を経て、第2次内閣を発足させた高市首相が、衆参両院で施政方針演説を行った。この施政方針には、見過ごし難い点が多数含まれている。

高市首相は、「来年度予算等の早期成立」において、「今年度末までに成立が必要な法案の早期成立に御協力ください。また、8年度予算の迅速な御審議もお願い申し上げ」るなどと述べた。だが、来年度(2026年度)予算案や関連議案の年度内成立が困難になったのは、言うまでもなく、1月23日に召集された通常国会での冒頭解散と、それに伴う衆議院議員総選挙によって約1か月の政治空白が生じたからであり、すべては高市首相自身の責任である。予算案や関連議案の審議は、十分な時間を確保して行われるべきであって、予算委員会質疑の短縮はあってはならない。

また、高市首相は「どのような国を創り上げたいのか、その理想の姿を物語るものが憲法」であるとした上で、憲法改正に関し「国会における発議が早期に実現されることを期待」するとも述べている。これは、憲法は公権力を縛るものであるという立憲主義の認識を欠く上に、改憲の発議権を有する立法府に対する行政府による介入であると言わざるを得ない。内閣総理大臣として行うべきは、改憲発議を国会に期待することではなく、憲法99条に規定された憲法尊重擁護義務の遂行ではないか。

施政方針には、憲法の平和主義を軽視する姿勢が目立つ。国家安全保障戦略をはじめとする「三文書」につき、本年(2026年)中に前倒しして改正するとしたほか、「防衛装備移転に関し、三原則におけるいわゆる五類型の見直しに向けた検討を加速させ」るとした。三文書には軍事費(防衛関係費)を、対GDP比で2%に引き上げることが盛り込まれていたが、これを2%以上(例えば、米国トランプ政権からの要求である3.5%)に引き上げる可能性も指摘されている。その場合、年間の軍事予算は、従来は5~6兆円だったのが20兆円前後となって、ますます医療や福祉、年金などの社会保障関係予算を圧迫する。ただでさえ、2026年度からは防衛増税(防衛特別所得税や防衛特別法人税の創設、たばこ税の引き上げ)が予定されているところ、さらなる防衛増税が国民生活を圧迫しかねない。

また、施政方針と時を同じくして、自民党の安全保障調査会で、三原則の運用指針を見直し、殺傷能力のある武器の輸出を原則解禁するという方針が了承された。日本は平和国家として、武器の輸出に独自の厳しい制約を課してきたが、今回の施政方針や自民党の方針は、平和国家としての日本の在り方を大きく変節させかねないものであって、断じて認めることはできない。

沖縄に関連し、高市首相は「在日米軍の円滑な駐留のため」、「沖縄県を含む基地負担の軽減に取り組」み、「普天間飛行場の一日も早い全面返還を目指し、辺野古への移設工事を進め」るとも述べた。だが、地元紙などの報道でも明らかになったように、辺野古新基地とは別に「長い滑走路」が選定されるまで普天間飛行場を返還しないとの考えを、米国の国防総省が公式文書に明記するなどした。政府が辺野古新基地の建設を強行しようとしている前提が完全に崩れたのであり、新基地建設は直ちに中止すべきである。

このほか、施政方針で言及されている「国家情報会議」の内閣への設置や、内閣情報調査室の「内閣情報局」への格上げは、まさに戦前の治安維持法の復活とも称されるスパイ防止法制定への一里塚であり、憲法に保障された思想・良心の自由や、表現の自由という民主主義的な価値を守る上でも、絶対に容認できない。

外交関係では、中国に対し「力又は威圧による一方的な現状変更の試みを強化」しているなどと批判している。だが、まさに力による一方的な現状変更である、先月の米国トランプ政権によるベネズエラ侵攻に対し何らの言及も批判もない。茂木外相による外交演説で、「ベネズエラ情勢への対応」として、「国連憲章を含む国際法上の原則は尊重されなければならない」としてはいるものの、米国への言及はなく、むしろ高市首相の施政方針では、「トランプ大統領との信頼関係を一層強固」にするとしている。米国への追従もはなはだしい。

また、「世界が依存し、民生用にも広く用いられるサプライチェーン上流の物資を管理下に置くことで、自国の主張に他国を従わせようとする経済的威圧の動きが顕在化して」いると述べているが、仮に、中国によるレアアース輸出規制などを念頭に置いているのだとすれば、日中関係悪化の根本原因である、高市首相による「台湾有事は存立危機事態」発言の撤回こそが不可欠である。「中国とは、戦略的互恵関係を包括的に推進し、建設的かつ安定的な関係を構築していくことが、高市内閣の一貫した方針」であることと、「台湾有事は存立危機事態」発言とは、まったくもって両立し得ない。

エネルギー問題に関しては、「原子力規制委員会により安全性が確認された原子炉の再稼働加速に向け、官民を挙げて取り組」むとしている。しかし、中部電力浜岡原発では、再稼働に向けた原子力規制委員会の審査対象となるデータである「基準地震動」を、過小に見せる操作をしていたことが明らかになった。電力会社がこうした不正に手を染める現状がある以上、原発の再稼働はもっての外であり、再生可能エネルギーの推進こそが図られるべきである。

国民生活に関連した部分では、「強い経済」の構築によって「物価上昇に負けない賃金上昇を実現」するとしている。「政府としては、賃上げの責任を事業者に丸投げせず、継続的に賃上げできる環境を整え」るとも述べているが、とりわけ、非正規雇用の賃上げに不可欠な最低賃金の引き上げに特段の言及がない。石破前政権は、2020年代に最低賃金を1,500円に引き上げるという目標を掲げていた。最低賃金への言及なき施政方針は、賃上げの姿勢が後退していると言わざるを得ない。

また、2年間に限り、飲食料品の消費税をゼロ税率とすることにつき「スケジュールや財源の在り方など、その実現に向けた諸課題に関する検討を加速」するとしているが、消費税率の引き下げは先の総選挙でも、わが党をはじめ多くの政党が公約に掲げていた。反対する政党は一部に限られるであろうことも考えれば、「検討を加速」でなく、関連議案を速やかに国会に提出し、早期の成立で国民生活を支援するべきである。

そして、極めて問題なのが、「働き方改革」に関連し「裁量労働制の見直し、副業・兼業に当たっての健康確保措置の導入、テレワークなどの柔軟な働き方の拡大に向けた検討を進め」るとしている点である。裁量労働制の拡大は長時間労働と過労死を助長しかねず、また、副業や兼業をしなくても十分な収入を得られる労働環境こそを実現すべきなのではないか。「ワーク・ライフ・バランスという言葉を捨てる。働いて、働いて、働いて、働いて、働いていく」ことを労働者に強いるような制度改正は、断じてあってはならない。

総じて、今回の施政方針演説は、昨年の臨時国会における所信表明演説と同様に、タカ派的な高市カラーの強い内容となっており、国民生活と憲法の平和主義とを破壊しかねない危険なものである。衆議院で自民党が単独で3分の2以上、日本維新の会とを合わせた与党で4分の3以上の議席を占めているという「数の力」で、施政方針における数々の問題ある政策が強行されないよう、社民党は高市政権と対峙する野党各党や市民との連携・協力もよりいっそう強化し、高市政権の暴走のブレーキ役としての役割を果たすべく取り組んでいく決意である。