社会民主党幹事長
服部 良一
- 5月21日にイスラエルとパレスチナはエジプトの仲介を経て停戦に合意した。12日間の激しい戦闘でガザ地区を中心に女性や子どもを含む240人以上が死亡した。「パレスチナ側がロケット弾を発射しイスラエルが反撃」あるいは「イスラエルとパレスチナの双方の暴力の応酬」との見方があるが、どちらも間違っている。パレスチナ問題の発端は、多くのパレスチナ人が先住していた土地にシオニズムを信奉するユダヤ人が軍事力と経済力を振りかざして侵入し、イスラエルなる国家を建設したことにある。あからさまな暴力が行使され、70万人のパレスチナ人が故郷を追われ、2000人とも3000人ともいわれる人々が虐殺されたとされる。それ以降もイスラエル側は占領地を拡大し、パレスチナ人の権利を侵害し、多くの蛮行を重ねてきた。イスラエル支配層の行動の背景には、第1次大戦から第2次大戦そして戦後にわたって繰り広げられた英仏露、米国などの大国のエゴイズムがあり、その影響を受けた一部のユダヤ人のシオニズム運動があった。
- 今回の空爆が、そうした歴史の延長線上で試みられたイスラエル側の作戦のエスカレーションだと見なされたことには理由がある。イスラエル当局は先月から、東エルサレムのシェイク・ジャラー地区のパレスチナ人を家と土地から強制立ち退きさせる動きを強め、極度に緊張が高まっていた。続いてダメ押しのようにイスラエルの右翼と警察が、ラマダン月でも最も神聖とされる5月7日から8日にかけて、アル=アクサ・モスクで礼拝を行っていたパレスチナ人を襲った。スタングレード弾やゴム弾や催涙弾を撃ち、人々をこん棒で激しく殴打し、多くの負傷者を出した。これら一連の行動がイスラエルによるパレスチナ人排斥、民族浄化の再現だと見なされて、憤激の高まりが爆発へと転化した。その結果起きた軍事衝突も、軍事力で千倍も万倍も勝るイスラエル当局にとってはガザ地区への徹底的な空爆とパレスチナ勢力の弱体化のチャンスとされたかのようだ。
- 停戦の合意がなされ、パレスチナ人は束の間の安堵を得ているが、この状況が長続きする保証はない。パレスチナ人の安全と平穏を多少なりとも持続させるためには、何よりもパレスチナ問題を発生させたイスラエル当局こそが、大きく譲歩の姿勢を示し、入植地の拡大やアパルトヘイトや封鎖、人権侵害や暴力をやめることが不可欠だ。パレスチナの人々は、今回のたたかいの中で第1次・第2次のインティファーダに続き三たび粘り強い抵抗の姿勢示した。欧米の各国でも人種や民族や宗教を超えたパレスチナ連帯の運動が拡大し、世界のユダヤ人社会の中にもイスラエル国家の在り方への反省とパレスチナ人への理解が広がり始めている。
- 日本においては政府や企業によるイスラエルの当局や企業との協力や癒着が広がり深まっている。それがイスラエル当局、軍部、シオニストの力を強化させることの無いよう、監視と抗議を強めなければならない。そしてイスラエルによる占領地での入植拡大、アパルトヘイトや封鎖、人権侵害と暴力を許さない取り組みを強めなければならない。