【統一教会問題 追及第2弾】旧統一教会の多額献金問題~関係政治家112人 ~選挙活動で信者を利用する政治家~与党の庇護を受けて拡大した教団
(社会新報2022年8月17日号4・5面より)
安倍晋三元首相が銃撃されて死亡した事件をきっかけに「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)」と政治家との関係があぶり出された。カルト宗教を追及する「やや日刊カルト新聞」が作成した資料によると、旧統一教会と関わりを持った現職国会議員は112人。98人は自民党だが、立憲民主党や日本維新の会、国民民主党、参政党の議員の名前も。旧統一教会は以前から高額献金などの多くのトラブルが指摘されてきた。政治家のモラルが問われている。
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安倍氏を銃撃した山上徹也容疑者は、旧統一教会信者の母親が「1億円もの寄付をして破産させられた」と供述。安倍氏が、昨年9月12日の旧統一教会系の「天宙平和連合」(UPF)の集会にビデオメッセージを送り、「敬意を表します」と述べていることを知り、安倍氏が旧統一教会とつながりがあると見て犯行に及んだとされる。
安倍氏のビデオメッセージについては、旧統一教会による霊感商法被害の根絶と被害者救済を目的に結成された「全国霊感商法対策弁護士連絡会」が、昨年9月17日に安倍氏に次のような公開質問状を送っていた。
「(安倍氏のメッセージを)統一教会が広く宣伝に使うのは必至です(略)安倍先生が、日本国内で多くの市民に深刻な被害をもたらし、家庭崩壊、人生破壊を生じさせてきた統一教会の現教祖である韓鶴子総裁(文鮮明前教祖の未亡人)を始めとしてUPFつまり統一教会の幹部・関係者に対し『敬意を表します』と述べたことが、今後日本社会に深刻な悪影響をもたらすことを是非ご認識いただきたいと存じます」
だが、安倍氏は、旧統一教会の“広告塔”として利用されることの危険性を認識していなかったのか、回答しなかった。
高額の祈祷料を徴収
旧統一教会に詳しい「異端・カルト110番」代表の張清益・とねりキリスト教会主任牧師が語る。
「旧統一教会は国際勝共連合、株式会社ハッピーワールド、UPIなど多くの関連団体を設立してきたが、多くの脱会者の証言や証拠によると、それらの団体はすべて旧統一教会の信者で運営され、人事も旧統一教会幹部が差配するなど、実態的には一体です。日本の保守政治家が長年に渡り、旧統一教会と持ちつ持たれつの関係にあることは常識です」
全国霊感商法対策弁護士連絡会の発表によると、1987年以降、旧統一教会がらみの金銭トラブルは少なくとも3万4537件発生。被害総額は1237億円を超えるという。
山上容疑者は、ツイッターで「統一教会の本分は、家族に家族から窃盗・横領・特殊詐欺で巻き上げさせたアガリを全て上納させることだ」(20年1月26日付)と発信している。母親は入会時に2000万円、その後も6000万円、2000万円と高額の寄付を続けたという。
旧統一教会の霊感商法については、印鑑、ツボ、多宝塔、高麗人参などの商品を原価の数十倍、数百倍といった高額で売りつける手口が報じられているが、最近では“先祖解怨”などと称して高額の祈祷料を徴収することが多いという。
「『先祖が地獄で苦しんでいる。あなたは先祖を救済するメシア(救世主)。助けられるのはあなたしかいない』と言って信者に先祖解怨式を受けさせる。先祖の霊は210代までさかのぼって救うことが可能とされます。たとえば一回目は7代までの先祖を供養させ、それを何度も繰り返させて、その都度高額のお金を徴収しています」(前出・張氏)
信者は金の成る木
張氏によると、霊感商法の被害者は40~50代の女性が多いという。
「旧統一教会は、正体を隠して『アンケートに協力して下さい。家系図を書きましょうか』などと言って近づき、入会後は『日本はメシアの国である韓国にひどいことをしたサタンの国だ。日本人の先祖の罪をわびなさい』と日本人の贖罪意識を利用して、各種儀礼に参加させるなどしてお金を取る。80~90年代は、仕事とお金を持っている女性、たとえば保育士、銀行員、看護師の女性が主なターゲットにされました。旧統一教会の資金源は、ほとんどが日本の信者による寄付金など。旧統一教会は日本の信者を金の成る木と考えて利用してきたのです」
張氏が最近、相談を受けたある娘さんは「母親が入信して、すでに1億円も寄付している。何とか辞めさせたい」と話していたという。山上容疑者の母親のケースは氷山の一角にすぎない。
日本の旧統一教会は1959年に創設された。旧統一教会と自民党との関係は古い。旧統一教会の文献『日本統一運動史』には、安倍氏の祖父、岸信介元首相が70年と73年に旧統一教会本部を訪ねたことが記されている。本部は、岸の東京・南平台の自宅と隣接していた。
岸は70年、73年の4月と11月の3回、本部を訪問。3回目の訪問時には文鮮明教祖と会っている。岸が本部を訪問したのは右翼の大物の笹川良一の勧めから。先の文献によると、その経緯を、岸は信者にこう話している。
文鮮明を特別待遇
「笹川君が統一教会に共鳴してこの運動の強化を念願して、私に、君の隣にこういう者が来ているんだけれども、あれは私が陰ながら発展を期待している純真な青年の諸君(だと勧められた)」
笹川は、68年に文鮮明が反共産主義の政治団体「国際勝共連合」を結成すると、その最高顧問に就任した。
文鮮明と親しくなった岸は、76年12月、旧統一教会運動に共鳴する人たちの集まり「希望の日実行委員会」主催の「第2回希望の日晩餐(ばんさん)会」の実行委員会名誉委員長を務めた。
文鮮明は84年、当時暮らしていた米国で所得税法違反に問われ、1年6ヵ月服役したが、これに関して『週刊新潮』今年7月28日号は、岸が、当時のレーガン米大統領に釈放を求める嘆願書を出していたと報じている。
それによると、岸は嘆願書で「(文鮮明は)誠実な男であり、自由の理念の促進と共産主義の誤りを正すことに生涯をかけて取り組んでいる」「彼の存在は、現在、そして将来にわたって、希少かつ貴重」などと最大級の賛辞を連ね、「彼が不当な拘禁から解放されるよう、お願いしたい」と求めている。
むろん米国が釈放するはずはなかったが、その文鮮明は刑期を終えた後、92年に日本を訪問した。日本の入国管理法では、日本や外国で1年以上の禁固刑を受けた外国人は日本に入国が認められていない。
それにもかかわらず当時の法務大臣が特別に入国を許可した。このときすでに岸は亡くなっており、実力者の金丸信元副総裁の働きかけによるものと見られている。
「持ちつ持たれつ」
一方、安倍氏は、官房長官時代の2006年にUPFの会合に祝電を送ったほか、勝共連合の機関誌『世界思想』13年3月号と9月号、15年2月号、16年9月号などの表紙にも登場。両者の蜜月ぶりがうかがえる。
『やや日刊カルト新聞』の調べでは、教会関連のイベントに参加したり、関連団体から献金を受け取っている政治家が目立つ。安倍元首相の元秘書官の井上義行参院議員は、メディアの取材に対し、本人自ら、旧統一教会の賛同会員であることを認めている。
安倍氏の実弟の岸信夫防衛相は会見で「(旧統一教会の)メンバーにボランティアとしてお力をいただいた。(投票を呼びかける)電話作戦などもあったと思う。選挙なので支援者を多く集めることは必要なことだ」と発言しているが、岸氏のように、旧統一教会信者の選挙運動ボランティアを受けた政治家は相当数いると見られる。
旧統一教会は「政権与党の庇護を受けて(略)違法判決が続出する布教活動や資金調達活動を行っているにもかかわらず、日本社会において着実に勢力を拡張することができた」(櫻井義秀・中西尋子『統一教会 日本宣教の戦略と韓日祝福』)とされる。旧統一教会と政治家の“持ちつ持たれつ”の関係を徹底的に究明する必要がある。(ジャーナリスト 長谷川学)
↑安倍氏が旧統一教会の関連団体UPFの大集会にビデオメッセージを寄せた(2021年9月12日)。=PeacelinkTVより
↑合同結婚式で儀式を行なう文鮮明教組(1992年8月25日、ソウル市)。撮影=橋本昇
↑合同結婚式で文鮮明教組に最敬礼する信者たち(同上)。撮影=橋本昇
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