元自衛官が性被害で実名告発~防衛省に署名を提出し被害の再調査を要望
(社会新報9月14日号3面より)
自衛隊内で受けた性被害を告発した元自衛官の五ノ井里奈さん(22)が8月31日、防衛省を訪れ、自身の被害の再調査を求める署名と、自衛隊内での性被害についてのアンケートを提出した。
◇
東日本大震災の際の自衛隊の奮闘を見て自衛官となった五ノ井さんを退職に追い込んだのは、昨年8月3日に受けた性被害だった。
当時、郡山駐屯地(福島県郡山市)に所属していた五ノ井さんは、訓練場所の宿舎で、男性自衛官ら3人から代わる代わる徒手格闘の技でねじ伏せられた上、両足をこじ開けられた。さら男性自衛官らは彼女の股間に自身の陰部を押し付け、腰を振るなどしたのだ。その様子を十数人の隊員が見ていたが、誰も止めようとせず、笑っていた者すらいたと言う。五ノ井さんの被害の訴えに自衛隊内で調査が行なわれたものの、誰も証言せず、強制わいせつの被害届けも不起訴処分となってしまった。不信感をつのらせた五ノ井さんは、今年6月に退職。同月末に実名顔出しで自らの被害を告発。再調査を求める署名を開始した。先月31日に、防衛省への申し入れで、五ノ井さんは10万5296筆の署名を、木村次郎政務官に手渡した。木村政務官は「(セクハラは)あってはならないことで、強い姿勢で根絶を図る必要がある」と語ったものの、五ノ井さんが求めている、第三者機関による調査については、「意見は受け止める」と述べただけであった。五ノ井さんの防衛省への申し入れには、社民党、立憲民主党、共産党、れいわ新選組の国会議員たちも付き添った。申し入れ後の会見で、社民党の福島みずほ党首は、「第三者委員会による調査は必要ですし、人権問題としてしっかり取り組むべきです」と語り、今後も超党派議員で五ノ井さんを支援していく意向を明らかにした。
今回、五ノ井さんは、自身の被害の公正な調査を求める署名のほか、署名サイトや自身のSNSで集めた自衛隊内でのハラスメントついてのアンケートも防衛省側に提出した。アンケートへの自衛官・元自衛官からの回答は146件で、女性隊員が身体を触られる、卑猥(ひわい)な言葉を投げつけられるといったことが日常的に行なわれているとの回答が多かった。その他、体形等がはっきり分かってしまう女性隊員のレントゲン写真を男性隊員らが回し見する、宴会で女性隊員が無理やり服を脱がされる、盗撮される、といった回答があった。さらに、強制性交されたとの回答も数件あった。また、男性隊員も上官に性器にマジックで顔を描いて写真を撮られたなどの被害があったとのことだ。これら被害の多くは、まともに対応されず、隠ぺいされたとのことだが、五ノ井さんは申し入れ後の会見で、「10万人以上の署名してくれた人々、勇気をもってアンケートに回答してくれた人々の思いが込められている」として、誠意ある対応を防衛省側に求めた。
なお、防衛相は6日、すべての自衛隊員を対象にハラスメントの特別監察を実施するよう防衛監察本部に指示したことを明らかにした。