社会新報

「国葬」反対の声が急拡大~4000人が国会正門前を埋める

(社会新報9月14日号1面より)

 

 今月27日に予定されている安倍晋三元首相の国葬に反対する大規模集会が先月31日、国会正門前で行なわれた。主催の「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」によると参加者は約4000人。集まった人々の「国葬反対」の怒りの声が永田町に響き渡った。

国葬で税金を使うな

 集会では、市民団体のメンバーや野党議員らが演説。主催団体を構成する「戦争をさせない1000人委員会」事務局長の内田雅敏弁護士は、「国家が追悼を行なうということは何らかの目的がある」と指摘。「森友、加計、桜を見る会。そうした疑惑を問う声に何一つ答えていない。これらの疑惑にふたをし、あるいは統一教会と自民党の関係にふたをし、岸田首相が安倍派に忖度(そんたく)して自分の求心力を高めようとする。そんなことに私たちの税金が使われてはたまらない」と憤り、「もしどうしてもやりたい人たちがいるなら、自分たちのお金で統一教会と一緒にやればいい」と皮肉った。また、内田さんは「国葬令は戦後の新しい憲法の下で廃止されたもの。これが閣議決定でできるのなら、不敬罪や教育勅語も復活させられることになる」と警鐘を鳴らした。
 野党からも、社民党の福島みずほ党首や立憲民主党の阿部知子衆院議員、共産党の小池晃書記局長が発言。参院会派「沖縄の風」の伊波洋一議員のメッセージも代読された。

弔意の強制許さない

 福島党首は「1948年日本国憲法が施行されると同時に国葬令は廃止になっている。法の下の平等や思想・良心の自由に反するからではないか。何でもかんでも閣議決定でできると思ったら大間違い」と述べ、参加者から拍手を送られた。
 その上で、福島党首は次のように強調した。
 「国葬は憲法違反であり、法的根拠がない。閣議決定ではできない。岸田首相は強制にならないようにするとしているが、府省庁は、弔旗を掲揚し黙とうすると言った。それは強制ではないか。府省庁がやるのであれば、同調圧力で、自治体や学校、企業などで、弔旗の掲揚や黙とうが事実上、強制される危険性があるのではないか。府省庁でやること自体、公務員に対する思想・良心の自由の侵害だ。違憲の法律をつくる、歴史修正主義、森友・加計・桜を見る会、政治の私物化をしてきた安倍元首相ではないか。安倍元首相は統一教会の集まりにメッセージを送ったり、票を分配したりしていた。ここまでズブズブな関係があったのに、国葬をやったら、統一教会を正当化することになる。だからやってはならない。弔問外交と言うが、現職の首脳はほとんど参列しない。統一教会と関係があると知って、来られないのだ。意味がない」

ジェンダー攻撃強行

 mネット・民法改正情報ネットワーク代表の坂本洋子さんは、安倍元首相は性教育やジェンダー教育を攻撃してきた人物だとして国葬反対を表明。
 「2005年に自民党で『過激な性教育・ジェンダーフリー教育実態調査プロジェクトチーム』が立ち上げられ、座長となったのが安倍氏。安倍氏はPTのシンポジウムで、男女共同社会基本法を否定し、ジェンダーフリーを進める側をカンボジアのポルポトになぞらえて批判した」
 坂本さんはさらに、安倍元首相が夫婦別姓も阻んできたと指摘。「政府は1991年に、男女平等の見地から夫婦の氏に関する法律を見直すとして法制審が見直しを開始。96年に法制審が選択制夫婦別姓の導入を答申すると、翌年に日本会議などが結成され、反対運動が始まった。その後も安倍氏の影響力の下、山谷えり子氏、高市早苗氏、杉田水脈氏らが夫婦別姓を妨害してきた」と訴えた。
 NPO法人アジア女性資料センターの本山央子さんも「国葬は、たった一つの『正しい家族のあり方』しか認められないのだとして人々のジェンダーとセクシャリティーを統制しようとする安倍政治を再生産するもの。たとえ、そのためにかかる税金がゼロ円であっても、国葬を許してはいけない」と訴えた。
海外メディアの変化
 上智大学教授の中野晃一さんは、国葬反対の世論の盛り上がりに言及し、「岸田首相の大失敗は、3ヵ月もの間を空けて国葬を行なうとしてしまったこと」と指摘。「私のところにも今、海外からも取材が相次いでいる。国葬への批判や、統一教会とのつながりがどんどん明るみになっていることなど、事件直後の『悲劇のリーダー』というものから、海外メディアが安倍元首相についてよりバランスの取れた報道をするようになってきている」。中野さんは最後に、「まだ1ヵ月ある。私たちの声をどんどん広げていこう」と呼びかけた。
 集会の最後を締めくくったのは主催団体から菱山南帆子さん。国葬予定日と同日同時刻の今月27日14時に国会前に集まろうと呼びかけたほか、9月19日13時半から代々木公園で、25日18時からJR新宿駅東南口で、同26日18時から新宿駅西口で、それぞれ国葬に向けた集会や街頭アピールを行なうと宣言し、参加を呼びかけた。

「国葬反対」を訴える市民たち(8月31日、国会正門前)。

福島党首が力を込めて「国葬」の中止を訴える。

福島党首が力を込めて「国葬」の中止を訴える。

コールを上げる菱山さん。

「女たちは国葬に反対する」とのウィメンズアクションの横断幕もあった。この日、4000人が国会正門前を埋めた。