社会新報

【主張】「東京東京五輪贈収賄事件」~大手出版社会長にも及んだ腐敗の解明を

(社会新報9月28日号)

 出版業界に衝撃が走った。東京五輪・パラリンピックをめぐる贈収賄事件は、ついに大手出版社の著名な経営者が逮捕される事態に拡がった。東京地検特捜部は9月14日、大会組織委員会元理事の高橋治之容疑者(受託収賄容疑で再逮捕)に約6900万円の賄賂を渡したとして、出版大手「KADOKAWA」の角川歴彦会長を贈賄容疑で逮捕した。特捜部の発表によると、角川容疑者は同社元専務と元担当室長と共謀し、大会スポンサーに選定されるよう高橋容疑者に便宜を図ってもらった謝礼として、2019年9月~21年1月までに約6900万円の賄賂を渡した疑いが持たれる。
 特捜部は、高橋容疑者の出身である大手広告会社「電通」時代の後輩に当たる人物が代表を務める「コモンズ2」に支払われた計約7600万円(そのうち700万円は時効)を賄賂と認定した。
 コモンズ2の代表からKADOKAWAの要望を聞いた高橋容疑者は16年、組織委や電通に対し、KADOKAWAと別の大手出版社の2社をスポンサー候補として挙げた。高橋容疑者らは、KADAKAWAの負担額の8割をスポンサー料として組織委に、2割を「手数料」としてコモンズ2に支払わせることを取り決めた。KADOKAWAは19年4月、出版サービス分野で「オフィシャルサポーター」の契約を組織委と締結。高橋容疑者らの取り決め通り組織委に2億8000万円、コモンズ2に計約7600万円を支払った。
 KADOKAWAは1945年に創業。前身は角川書店で、創業一族の角川容疑者は93年に社長に就き、30年近くトップの座に就いてきた。2014年には「ニコニコ動画」で台頭したIT企業ドワンゴとの経営統合に踏み切った。
 今回の事件では、スポンサーだった紳士服大手「AOKIホールディングス」の前会長らも贈賄罪で逮捕・起訴されている。17年7月に組織委会長の森喜朗元首相が高橋容疑者の紹介でAOKI前会長と面会。前会長は森氏に現金を渡したと供述している。また、大手人材派遣会社の会長を8月に辞任した閣僚経験者の関与にも特捜部が重大な関心を持っているといわれる。
 もはや「五輪マネー」疑惑は底なしの状態。「平和の祭典」を腐敗の巣に変えてしまった組織委の責任は重大だ。徹底解明を求める。