社会新報

【主張】「安倍国葬儀」強行~「国葬」反対から統一教会の政治関与を一掃へ

(社会新報10月5日号主張より)

 

 9月27日、東京の日本武道館で安倍晋三元首相の「国葬儀」が開催され、国内外から約4200人が参加した。社民党は当初から国葬の実施に反対し、院内外の反対運動と連携しながら中止を求めてきたが、阻止できなかったことは誠に残念である。しかし、当日は国会前に1万5000人もの市民が集まったほか、全国各地で反対の声が上がった。国葬の強行は、安倍氏を国全体で悼むどころか、その評価が国論を二分していることを印象づけることになったのである。
 安倍元首相が殺害され、安倍氏の国葬実施が閣議決定(7月22日)されて以降、安倍国葬反対の声が次第に強まった。説明不足との批判に対して、岸田首相は「さまざまな機会を通じて丁寧に説明」をしてきたはずだが、首相が「説明」すればするほど国葬への反対の声は強まった。7月末ごろに5割程度だった「国葬反対」は9月中旬には6割程度にまで増えた。
 国葬反対の理由として指摘されてきたのは、①国会での審議・議決も、野党への説明もなく閣議で決めた決定プロセス②戦前の「国葬令」が失効して新たな法整備が行なわれなかった経緯との整合性③安倍氏を特別扱いする「基準」の不明確さ④「モリ・カケ、サクラ」問題など政治を私物化してきた安倍氏がそもそも国葬にふさわしいのかという批判⑤国家の名で安倍氏を顕彰しようという「弔意の強制」への反発⑥不明朗で膨大な必要経費ーーなど多岐にわたった。
 中でも最も大きかったのは「統一教会(現・世界平和統一家庭連合)」の問題だろう。安倍氏を殺害し現行犯逮捕された山上徹也容疑者が動機とした「統一教会への恨み」が報道され、安倍氏と統一教会の密接な関係が注目されたのである。反社会的な活動で知られるカルト宗教と自民党がズブズブの関係をつくり政策がゆがめられてきたことや、有力政治家がカルト宗教の広告塔となってきたことが話題になった。批判が高まる中で自民党は自主的に「点検」した結果を公表したが、その内容は全くお粗末なもので、安倍氏の問題には踏み込んでいない。
 岸田文雄首相は「本人が亡くなられた時点において、その実態を十分に把握することは限界がある」として調査すらしない方針だが、これはとうてい納得できる説明ではない。安倍氏・自民党とカルトとの癒着問題を、国葬強行で幕引きさせてはならない。