社会新報

「中国包囲」がもたらす 沖縄・南西諸島の戦場化 -「沖縄と憲法」オンライン対談

(社会新報2021年6月2日号1面より)

 

日本国憲法施行から74年となった5月3日、社民党はオンラインで「憲法記念日2021 憲法を活かす」と題した動画配信を行ない、その第2部として「沖縄における平和的生存権と憲法」をテーマに、福島みずほ党首、沖縄平和運動センター議長の山城博治さん(党常任幹事)、ジャーナリストで映画監督の三上智恵さんが語り合った。

 

 

土地規制法案は危険

福島みずほ党首 憲法記念日の5月3日、山城博治さんと三上智恵さんに、「沖縄と憲法」について語ってもらいます。

山城博治さん 沖縄では、反憲法的な動きが加速する。中心は、日米両政府が進める、中国の軍事的脅威をあおりながらの戦争準備、沖縄本島や南西諸島に押し寄せる軍事化の波だ。

人権侵害も深刻だ。政府が出してきた「重要土地調査規制法案」は、米軍や自衛隊の基地、原発などの周辺1㌔以内の土地・財産情報を国が掌握、規制するもの。嘉手納基地なら嘉手納町のほぼ全域、普天間も密集した市街地が入る。個人情報を国家が丸裸にし、監視する、とんでもない法律だ。

沖縄では、憲法を守るということは観念ではない。自分の具体的な生活、権利を守ることそのものだ。有事の権利制限は当然とする議論に流されてはいけない。有事とは何か。中国の軍事進出が本当に日本を脅かしているのか。ここを詰めないと、ミサイルにはミサイル、核には核という軍事の論理から脱け出せない。

 

馬毛島で実戦に備え

三上智恵さん 今年の10月~11月、自衛隊は南西諸島防衛のためとして14万人規模の大演習を計画。4月の日米首脳会談でも菅首相は、軍事的にパワーアップして台湾有事に駆けつける、核攻撃も辞さず中国に対抗すると、アクセル全開。沖縄や南西諸島が戦場になってもかまわない。そんな勢いだ。

憲法9条は大事だが、文言さえ変わらなければ戦争を止められるのか。辺野古をメインで使うのは、実は自衛隊。新設される水陸機動団の出撃拠点だ。米軍が空母に見立てて訓練するために必要だと防衛省が買った馬毛島(まげしま=メモ)も、有事に備えた自衛隊の集積港となる。政府・防衛省は、米国の要求を隠れみのに実戦を想定した自衛隊の整備・強化をゴリ押しに進めている。これが沖縄の肌感覚だ。

沖縄は、憲法13条の幸福追求権も奪われてきた。人が幸福に生きるための最大の条件は、命を脅かされないこと。だが、本土復帰後の沖縄が、命の不安から解放されたことはないし、戦場化への動きの下、不安は募るばかりだ。

先祖を大切にする沖縄の人々の気持ちも踏みにじられる。私たちは、遺骨の混じる南部の土砂を使った辺野古埋め立てを止めるため、戦跡公園で始まった土砂採掘用の鉱山開発に玉城デニー知事が中止命令を出すよう願った。だが知事の判断は効力の弱い措置命令。失望し、ショックも受けた。ところが、そんな弱い対応でも、当の業者は沖縄県の作為で数億円の損失が生じると賠償を求めて県を訴える構えだ。一事業者を超えた大きな力が働いていることは想像がつく。

福島 戦争準備の負担は沖縄や南西諸島に集中し、憲法でさえないがしろ。ストップをかける上で、大事なことは何でしょう。

 

対話通じ平和を築く

山城 中国の砂漠地帯には嘉手納基地を模した施設があり、衛星情報には、滑走路など目標を正確に打ち抜いたミサイルの弾痕が写っている。米国は中国包囲の前線、沖縄・琉球列島、南西諸島、フィリピンまでのラインに、核付き前提のミサイル基地網を展開する計画だが、それをにらむ中国にとっては標的でしかない。いざ戦争となれば一発の閃光(せんこう)で終わりだ。

どう身を守るのか。防衛省・防衛局は平然と責任放棄。住民は、沖縄戦の当時も今も、戦火から逃げも隠れもできない。

まず戦争を止める。対話を通じて平和を築く。それ以外にない。

三上 日本が米国のコバンザメをやめ、米中のパワーバランスの間で、新しい独自のポジションを確立することが急務。米国の面子も損ねず、お隣の中国と円満、友好的に付き合っていく方向を真剣に模索する時だ。

 

新たな遺骨作らない

山城 沖縄戦の遺骨を収集する具志堅隆松さんは、辺野古でこう言った。「遺骨を拾い、供養するだけではなく、新しい戦死者、新しい遺骨をつくらないということも、私の認識にはある。だから辺野古にも来る」と。この言葉の意味を大切にし、全国へ発信する。

三上 具志堅さんは、南部土砂の辺野古投入に抗議するハンスト(3月1日~6日)で、1時間に1度、沖縄県庁に向かって「デニーさん、助けてぃくみそーりよー(助けて下さい)」と投げかけ続けた。頭にあったのは、沖縄戦時、避難していた壕の入口が米軍の艦砲射撃でふさがれ、家族7人が餓死した桃原さんご一家のこと。壕から聞こえた「助けてぃくみそーりよー」の声は、三日で絶えた。これを、具志堅さんはデニー知事にぶつけた。すさまじい気迫だ。へこたれている場合じゃないと思った。

福島 沖縄の皆さんの戦争への危機感を共有し、平和創造・構築の力を強める。憲法に「緊急事態条項」を押し込む策動は断じて許さない。(文責・編集部)

 

馬毛島(まげしま)

鹿児島県西之表市、種子島の西12㌔に位置し、面積8・20平方㌔、周囲16・5㌔。2011年の日米安全保障協議委員会(2プラス2)で、米空母艦載機の陸上離着陸訓練FCLPの候補地とすることに合意。19年、防衛省が相場を大きく超える160億円で、所有者のタストン・エアポート社から買収した。